安倍晋三首相 (c)朝日新聞社 @@写禁
安倍晋三首相 (c)朝日新聞社 @@写禁

 首相に返り咲いて2年3カ月。順風満帆だった安倍政権がいま、苦境に立たされている。

 国の補助金を受け取っていた企業からの寄付問題で辞任した西川公也前農林水産相に続き、先週は下村博文文部科学相、望月義夫環境相、上川陽子法相の3人に、カネの問題が浮上。民主党をはじめとする野党から連日、厳しい追及を受けているのだ。

 下村氏は「複数の支援組織が、政治団体の届けを出さずに活動。“闇の政治資金”を吸い上げている」と週刊文春に報じられた。

 2月26日の衆院予算委員会で下村氏は「それらの組織は、私の政治活動とは無縁」と強調。だが、自身のフェイスブックで「後援会のひとつ」と記していたことは認めた。本当に自身の政治活動とは無関係の組織なのか。疑念は残る。

 望月、上川両氏は辞任した西川氏と同じく、国の補助金交付が決まっていた企業から、献金を受けた。政治資金規正法では国の補助金交付決定の通知から1年間、政党や支部への政治献金を禁じている。補助金交付を知りつつ献金を受け取れば政治家側も違反に問われる。

 望月、上川両氏は「補助金を受けている企業とは知らなかった」と説明。安倍首相も「補助金交付を知らなければ、問題はない」と火消しに走ったが、野党の攻撃はやむ気配はない。3月3日と6日には再び集中審議が開かれる。来年度予算案の審議になかなか入れず、首相が目指す年度内成立は黄信号がともる。

 政治評論家の浅川博忠氏が言う。

「野党から集中砲火を浴びた西川前農水相を23日にスパッと林芳正氏に代えたことで、首相は『これで野党の攻撃も沈静化する。疑惑もそれほど追及されずに済む』と思ったでしょう。昨年10月に小渕優子前経済産業相、松島みどり前法相にカネとうちわの問題が出たときも、すぐに辞任させてしのぎましたから。新たに3閣僚からカネの問題が出たことは想定外。かなりイライラが募っているように見えます」

 それにしても安倍政権では「政治とカネ」の問題で辞任する閣僚が多い。第1次政権では佐田玄一郎行政改革相、松岡利勝農水相、赤城徳彦農水相、遠藤武彦農水相。2012年12月に首相に返り咲いてからは小渕氏、松島氏、西川氏と計7人もいる。00年の森喜朗政権以降の15年間で「政治とカネ」で辞任した閣僚は12人だから、大半が安倍内閣だ。

 民主党の馬淵澄夫元国土交通相は「首相は閣僚の資質を見極める見識を備えず、毎回、政治とカネの問題に真摯に向き合っていない証左」とバッサリ。

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