妻「その場で抗うつ薬と精神安定剤を飲んで帰宅したんですが、病院からの道すがら、風景に色が戻ってくるのがわかるんですよ。『あ、空が青い。木が緑だ。ドトールの看板が黄色い!』。それまで、目にしている景色がモノクロに見えていた。そのことにさえ気づいていなかった。あの体験は本当に不思議でしたね」

夫「で、次の診察には私もついて行って」

妻「この病気には家族の理解と協力が大切だってことで、仕事の都合を調整してついてきてくれた。それからですね、えもっちゃんが変わった。優しくなったというか、優しさの深みが増しましたね。さすがに私がいなくなったら困ると思ったのかも」

夫「何が起きてるんだかわからないんじゃ、こっちも対処できないからね。その時先生に言われたのが、『朝6時起床、夜10時就寝』」

妻「そう。『これだけはがんばってください』と。とにかく朝6時には起きて体を立てる。夜10時には枕に頭をつけて、体を横たえる。昼寝はしてもいいけど、絶対に横にならない」

夫「1年、続けたんだよね」

妻「この人はとにかく、こうと決めたらずーっと、続けられる人なんです。毎朝、私より早く起きて『和枝!6時だよ!』って」

夫「1年たって、先生からもう大丈夫、って言われた」

週刊朝日 2015年3月6日号より抜粋