各大学の構想は…(イメージ写真)
各大学の構想は…(イメージ写真)

「スーパーグローバル大学(SGU)」とは、第2次政権発足後、安倍晋三首相の肝いりで発足した「教育再生実行会議」が提言したもの。世界で通用する研究や国際化を進める大学を重点的に支援する政策で、国際競争力の強化を目指すねらい、世界の大学ランキング100位以内を目指す「トップ型」と「グローバル化牽引型」にわけ、計37校が認定されているが、高い倍率を勝ち抜いた大学の構想には、独自色を打ち出したものが目立つ。

 古くは帰国子女の受け皿としても知られるグローバル大学の“老舗”、国際基督教大学(ICU)は、グローバル人材を、

「自らのよって立つところを公言してそれに責任を持ち、その上で他者の価値観に心を開き、他者からの人格的な信頼を得て、学びと交わりへ歩み入ることのできる人間」(日比谷潤子学長)

 ととらえる。価値観の違いを乗り越えた信頼関係を結び、さらに発展させていける人材だ。

 具体的なSGUとしての新たな取り組みの一つには、留学制度の拡充が挙げられる。同大は昨年3月、世界15カ国、27のリベラルアーツ(教養教育)大学の提携に、国内から唯一参加。提携プログラムを通じて、これまでは3年次に1年間だった提携大学への留学を、半年間ずつ2カ国へ行けるようになるという。

「創立当時からグローバル人材を育ててきたICUでは、英語ができるのは当たり前。これからはできれば三つの国の社会・文化を経験することによって、広く国際的な視野を持ってほしい」(日比谷学長)

 学内全体のグローバル力の底上げをねらい、10年後の到達目標を他大学に先駆けて昨年5月に“見える化”したのが立教大学だ。

 全学生の海外派遣、現在の4倍の留学生の受け入れ、外国人教員比率の拡大や欧米のリベラルアーツ大学との連携の強化など、24のプロジェクトごとに具体的な目標値を設定している。

 また、来年からは英語で「読む・書く・聞く・話す」の4技能をはかる外部試験を導入するほか、学位取得まですべて英語で学んだり、海外インターンシップを経験したりといったさまざまなプログラム開発にも力を入れるという。

「世界水準の教育システムを構築して存在感を高め、国際社会に貢献していきたい」(吉岡知哉総長)

 異色なのが東京芸術大学だ。

「岡倉天心やフェノロサという、そもそも世界を志向した人たちが創立した学校。芸術そのものがボーダーレスなので、グローバル人材育成は今に始まったことではない」(戦略企画課)

 という同大の構想では、発信力を際立たせて世界での存在感を増すことに、より重点を置く。

 青柳正規文化庁長官と同大の宮田亮平学長が発起人となって立ち上げた2020年の東京五輪に向けた「上野『文化の杜』」構想、バングラデシュ、中国、インド、韓国、タイ、ベトナムなどから芸術大学の学長らを招く意見交換会をはじめとする各種シンポジウムの開催などもその一環だ。

 さらに目をひくのが、「世界芸大ランキング」を作成するという構想。学術論文の数などに大きく左右される既存のランキングに芸術系大学は選ばれにくい。だが、同大は国際的なコンクールでの受賞歴や映像研究、文化財修復など世界的な実績がある。芸大ランキングがあれば上位になると予想されるし、同大が主導ならば、いっそう世界にアピールできると見られている。

週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋