レイチェルさん(24)は、「メニューのさわら、パソコンで漢字変換したら難しい。魚偏がいっぱい出てきた」。

 日本に来て間もない彼女たちは、毎日必死だ。今は介護現場に出ながら、トイレやベッドからの移動や、ベッドメイキング、オムツ交換をおさらいしている。

「ホームシックになりませんか?」と聞いたら、「なる、なる」と皆が即答。

「だけどスカイプで家族と話せる」といちばん年長のコニーさん(31)。それよりも困ったのはお金で、初めて1月末にもらった給与は、「仕送りしたら、残りちょとだけ」(グラシアさん=24)。

 異国の地の生活は期待と不安に満ちているようだ。でも口をそろえて「一生懸命、試験受かります。働きます」と白い歯を見せる。

 関係者によると、「中には出稼ぎ感覚が強く、試験に受かっても帰国する人もいる」そうだ。候補者の帰国後に現地を訪ねたら、立派な家が建っていた、という例も。

 目的が学びであろうとお金であろうと、彼女たちがひたむきなのは事実だ。ところで日本で働く外国人たちが、“嫌な思い”をしたことはないのだろうか?

 伊興園の杉本浩司施設長はこんな話を明かしてくれた。

「高齢の男性の家に訪問介護に行ったとき、外国人のヘルパーさんを派遣したんです。そうしたら、『二度と連れてくるな。今度連れてきたら撃つぞ』と後から私がモデルガンを見せつけられました」

 千葉県のある老人施設でも、「おとうさんがガイジンさんに世話を受けるのはいや」と、入居をやめたケースもあるという。少ないながらも、アレルギーのように受け付けない人もいるようだ。

週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋