「奥さんが次女を抱っこし、三輪車で遊ぶ長女を笑顔で見守る。休日は旦那さんが娘さんと自宅前で遊んでいるのをよく見かけました。仲の良い家族でしたし、子供を愛しているように見えた。家の中はほこり一つないくらいピカピカで几帳面。子供の面倒を見ると、自宅までお礼を言いに来てくれる律義な奥さんだった」(近所の住民)

 表面上は順風に見えたが、同じ幼稚園に子供を通わせる母親は、小さな異変を感じたと、次のように言う。

「メイクをきちんとしていたママが、昨年秋ごろはスッピンのようで顔色が悪かった。そのときは病院に行ったと聞いたが、最近は元気そうに見えた。もっと話を聞いていたら、助けられたかもしれないのに……」

 理香容疑者が虐待した形跡は確認されていない。

 新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(社会心理学)は、こう分析する。

「真面目で『いい子育てをしなければ』という思いが強く、愛が空回りして疲れ果ててしまったのでは。他の子育て現場に触れ、気楽に『この程度でいいんだ』と力を抜いて考えることが大切です。容疑者は特別弱い母親ではなく、特別悪い母親でもないと思う。誰にでも起こりうると認識しなければなりません」

 事件後、冒頭の老人は切ない光景を目撃した。

「長女と同じ幼稚園に通う孫が、『怜ノ亜ちゃん、お休みしているの』と言うんです。唐突すぎる死を知らず、また一緒に遊べると思っているんです……」

(本誌取材班=上田耕司、小泉耕平、西岡千史、福田雄一、牧野めぐみ/今西憲之)

週刊朝日 2015年2月27日号