テレビや舞台で活躍する俳優の宇梶剛士(たかし)さん。作家・林真理子さんとの対談で不良時代のエピソードを語った。

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林:私、宇梶さんの本(『不良品』)も読みましたが、宇梶さん、「昔、ヤンチャしてました」なんていうもんじゃないですね。暴走族2千人を束ねてたんでしょう?

宇梶:まあそうですね。

林:トップになったのはいくつのときですか。

宇梶:17歳のときかな。

林:コミックの主人公みたい。

宇梶:そんな感じでした(笑)。

林:いろんなことが、合議制で決まるんですってね。

宇梶:そうなんですよ。「世の中なんかクソだ」「大人は汚ねえ」とか言ってるくせに、十いくつある支部ごとに、リーダー、サブリーダーとかがいて、幹部会やるときには「雪駄で来るな」とか。不良がですよ(笑)。ちゃんと議事進行係がいて、コースを決めるんです。「先週は新宿行って原宿抜けたから、次回は海だ」とか、「ここに集まって、甲州街道から16号に入って、129号で検問があるから、そこを突破するか、いったん散るか。散った場合、第2集合場所はどこで……」とか。

林:へぇ~。

宇梶:「◯◯のチームに当たったら、あそこはこの前××支部のやつがやられたからいくぞ」とか、「◯◯の連合は昔からOB同士が仲いいからやるな」とか、そういう話し合いをするんです。

林:当時のことをバラエティー番組で話したら、すごい反響だったんですって?

宇梶:「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」に出たときに、タモリさんが「宇梶さんって、昔、暴走族だったんですか」みたいなことを言ったんです。俺、それまでけっこう隠してたんですよ。「昔のことで威張ってる」と思われるのもいやだから。でも、生放送で聞かれたので、「はい」と言ったんです。

林:それで知れわたっちゃったんだ。

宇梶:それから急にバラエティーとか写真週刊誌の取材とかが増えて、ちょっとキツいなと思ったときに、出版社の編集者から長文のメールが何通も届いたんです。半年ぐらい放置してたんですけど、さすがに悪いなと思って、「人さまに言えるような生き方をしてきてません。不良をやめてからは夢を持って生きてますけど」みたいな返事を書いたら、すかさず「そこですよ。読者はそこが読みたいんです」って。

林:それが『不良品』という本なんですね。単行本は2003年、文庫は05年が初版ですが、奥付を見ると最近また重版がかかって……。

宇梶:こういう生き方に共感してくださる方がいるんでしょうね。人権問題の講演に呼ばれることは多いんです。グレて、何とか立ち直ってみたいな、おあつらえ向きな経歴なんで。

週刊朝日 2015年2月20日号より抜粋