異変を感じていた 三島由紀夫「割腹自殺」をドナルド・キーンが語る (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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異変を感じていた 三島由紀夫「割腹自殺」をドナルド・キーンが語る

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ドナルド・キーン日本文学研究者Donald Keene 1922年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学、同大学大学院、ケンブリッジ大学を経て、53年、京都大学大学院に留学。コロンビア大学名誉教授。日本文学の研究に力を注ぎ、欧米に広く紹介した。2008年、文化勲章受賞。12年、日本国籍を取得。著作に『百代の過客』『明治天皇』など多数(撮影/写真部・工藤隆太郎)

ドナルド・キーン
日本文学研究者
Donald Keene 1922年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学、同大学大学院、ケンブリッジ大学を経て、53年、京都大学大学院に留学。コロンビア大学名誉教授。日本文学の研究に力を注ぎ、欧米に広く紹介した。2008年、文化勲章受賞。12年、日本国籍を取得。著作に『百代の過客』『明治天皇』など多数(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 きっと彼は、11月25日のことを考えていたのでしょう。

 事件の当日はニューヨークにいました。夜の12時頃に読売(新聞)のワシントンにいる記者から電話がありました。彼は私が三島さんの友人だということを知らず、ただ親日的なアメリカ人として「三島さんが今日、切腹しましたが、ご感想は?」と訊いてきたんです。私は何も言えなかった。私はたまたまニューヨークにいた永井道雄さんのホテルに電話しました。当時、朝日新聞の論説委員だった永井さんはすぐに東京に問い合わせてくれて、「本当だ」と。

 その後は朝の7時まで日本のマスコミからの電話が鳴りっ放し。一様に「自殺の気配は」と訊いてきて、私の返事も同じ返事。やがて自分の声が他人の声のように思えてきて、自分が一種の機械になったような気がして、何も感じられなくなりました。

 2、3日後に三島さんの最後の手紙が届きました。奥さんが机の上にあるのを見つけて、押収される前に送ってくれたのです。その手紙を読んで、初めて三島さんの死を事実と認められました。

 自死の理由は、いまもわかりません。

週刊朝日 2015年2月20日号より抜粋


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