昨年1月3日に亡くなったタレントのやしきたかじん氏(享年64)をめぐる騒動は、一周忌のイベントが2派に分かれ同時開催される異常事態に発展した。

 妻のさくら氏側は2月3日夜、大阪市北区のホテルでテレビ関係者など約150人を集めた会を行った。昨年3月の「お別れの会」にはファン約4千人が訪れたが、今回は関係者のみ。

 会場はピリピリムードで、ホテルの案内板に会の名前はなく、会場の前に「TAKAJIN MEMORIES 2015」と書かれた小さな看板があるのみだった。

「今日は貸し切りなので立ち入り禁止です」と、報道陣はフロアからも追い出された。スタッフに取材を試みても、会の出席人数や主催者が誰なのかすら「言えない」と、口が重い。

 ただ、出席者は豪華だった。司会をキャスターの辛坊治郎氏が務め、新党大地代表の鈴木宗男氏や、河村たかし名古屋市長、タレントの杉浦太陽氏、芸能リポーターの井上公造氏らの姿があり、安倍晋三首相からの花も飾られた。

 たかじん氏の長女に出版差し止め訴訟を起こされているノンフィクション作品『殉愛』(幻冬舎)の著者の百田尚樹氏(58)は受付が開くより早く、黒いスーツ姿の長身の美女を伴い来場。出席者らによると、会では「お騒がせしてすみません。ここで多くのことを言うべきではない」などとスピーチし、さくら氏も「本(『殉愛』)のことは後悔していません」とあいさつしたという。

 一方、同時刻に北区のライブハウスで開かれた会は、たかじん氏の元マネジャーの男性が中心となって開催。たかじん氏の親族や音楽関係者など約130人が集まった。たかじん氏の長女(41)は体調不良で欠席したが、実弟の家鋪良行さんがあいさつ。

「両親の入院や葬儀の費用は、すべてたかじんが出してくれた。非常に親族を大事にしていた。世間で言われているような確執はなかった」などと語り、報道陣には「真実を何らかの形で伝えていく」と訴えたという。会に出席したたかじん氏の元弟子・打越元久氏がこう語る。

「『殉愛』騒動にはあまり触れないよう、みんな気を使っていた。たかじんさんの『あんた』が演奏されると涙する人も多く、良い雰囲気の会でしたよ」

 法廷での争いも始まっている。長女が起こした出版差し止め訴訟は、1月21日に東京地裁で第1回口頭弁論が行われた。だが、被告の幻冬舎側は出廷せず審理は5分ほどで終了。長女の担当弁護士は「来ないなら来ないで、(訴状への)認否をきちんと出してほしい」と憤った。

 百田氏は自身のツイッターに昨年11月、「書かれたことはすべて真実だ! 虚偽だと言う者がいるが、法廷で決着をつける!」と記しているが、果たして真相は明らかになるのか……。

(取材班=今西憲之/本誌・一原知之、上田耕司、小倉宏弥、小泉耕平、野村美絵、牧野めぐみ)

週刊朝日 2015年2月20日号