水槽は直径約30メートル、最大水深7メートル、水量約2200トンに及ぶ。マグロの飼育は難しく、国内外の水族館からの視察も多い=2015年2月2日撮影葛西臨海水族園東京都江戸川区臨海町6-2-3(撮影/写真部・松永卓也)
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水槽は直径約30メートル、最大水深7メートル、水量約2200トンに及ぶ。マグロの飼育は難しく、国内外の水族館からの視察も多い=2015年2月2日撮影
葛西臨海水族園
東京都江戸川区臨海町6-2-3
(撮影/写真部・松永卓也)

 外洋を高スピードで泳ぐ回遊魚、マグロ、スマ、ハガツオが群泳する姿を世界で初めて間近で見られるようにした東京・葛西臨海水族園のドーナツ形巨大水槽。今この広い水槽を泳ぐのはたった3匹に――。

 異変が起きたのは昨年12月上旬。急に速度を変えるなど異常な泳ぎをするスマが現れた。それが他の魚の泳ぎを乱して水槽への衝突死が増加。合計159匹いた魚のうち、今年1月19日までにスマが、続いて26日にはハガツオが全滅した。大学や研究機関へ死んだ魚の病理検査を依頼したところ、脾臓(ひぞう)からウイルスが検出されたとの報告があったが、現在の時点で、直接的な原因はまだ特定されていない。

 今や、巨大な水槽の中には、寄り添うように泳ぐ3匹(推定1歳、3歳、4歳)のクロマグロが残るのみとなってしまった。

「クロマグロは大きさの近いもの同士で群れをなすのが一般的。仲間がいなくなり不安になっているのでしょう。3匹だけでも生き残ってほしいですね」

 そう話すのは葛西臨海水族園飼育展示課の杉野隆さんだ。

「ストレスや変化を軽減するため、照明を付けっぱなしにしたり、お客様の存在が気にならないよう日中止めていたエアカーテンもそのままに。本来は群れで餌を食べますが、数が減ったことで食べる量が減っているので、餌は好物のイワシを中心に工夫しながら与えています」

 寵愛を一身に受けるマグロ。原因が分かっても、年齢等のバランスを考えながら増やしていくので、大群となるには3年ほどかかるという。3匹がまた仲間たちと泳げるよう見守りたい。

週刊朝日 2015年2月20日号