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 近ごろ中高年の間で、高層マンションなど駅近の集合住宅の人気が高まっている。「いつまでも自分らしく暮らしたい」「健康なうちに新たな縁を作りたい」などの思いから、利便性のよさを求めているのだ。

 そんなニーズを満たす住まい方の一つが、駅近タワマンへの転居なのだ。

「ゲストルームなどの共用部分が充実し、人を呼びやすく、高層階なら眺望を喜んでもらえる。まさに『千客万来装置』です」(住宅・不動産の情報サイト「SUUMO[スーモ]」の池本洋一編集長)

 ところで中高年が暮らしやすい街や駅とは具体的にどこなのか。株式会社リクルート住まいカンパニーが実施した50~60代対象の「住みたい街(駅)ランキング」の1位は、関東が吉祥寺(東京都武蔵野市)、関西が夙川(兵庫県西宮市)。池本編集長が言う。

「商店街に活気があるなど街が面として広がり、行きつけにしたい個性的な店があって街歩きが楽しめる。さらに治安がよく品格やステータスのある街がこの年代のツボのようです」

 ちなみに関東の2位は恵比寿、3位は鎌倉、関西では2位が西宮北口、3位が岡本と続く。ただし表に挙がる地名は若い世代にも人気だ。では、これから中高年が狙うべき街はどこか。この道20年の池本編集長にぶつけた。

「ズバリ『蒲田』です」

 イメージがいい東急線が通っており、さらに2路線使える。羽田空港へは一本、今後は東急と京急がつながる計画もある。駅前にはハンドメイド用品の殿堂「ユザワヤ」がそびえ、ギョーザ屋などリーズナブルな店が充実し、下町ののどかな雰囲気も……。

 ここまで読んで、住み替えを考え始めた人のために、いつごろから本腰を入れるべきかを考えたい。

 出版プロデューサーの石川正尚さん(59)は40歳のとき、江戸川区内にあった実家を3階建て11LDKに建て替え、両親との同居に踏み切った。10年後、母は認知症に。介護を担う妻が精神的に追い込まれ、母を茨城県の介護付き老人ホームへ入所させた。父もその近くの施設へ。

 ところがこのころ石川さんの勤め先の出版社が業績不振に陥り、リストラ案を発表。熟慮の末、早期退職し起業する。割り増しされた退職金でローンを完済し、売却。京成小岩駅から徒歩2分の3LDKの賃貸マンションに移った。

 昨年一人娘が結婚して出ていき、妻と2人暮らし。仕事場を兼ねた自宅は交通や買い物に便利で、お年寄りが多い街のせいか、「これからも安心して暮らしていけそう」と石川さん。公私ともに転機が重なった時期の住み替えだったが、「体力のある50代にやれて良かった」と胸をなで下ろす。

「親の持ち物がトラック数台分もあって、片付けや処分が大変でした。また、その後僕らだけで住み続けたとしても、年を取ったら広すぎるし、掃除もままならなかったでしょう」

 前出の池本編集長によると、住まいや財産の見直しは(1)50代と(2)定年後で年金生活の始まる65歳の、2度にわたってするのが理想という。

「特に65歳は子どもが住宅購入を検討するタイミングとも重なることが多い。子ども世帯と話し合い、相続も想定しながら住み替えを検討してください」

週刊朝日 2015年2月13日号より抜粋