「まさか、こんなことが自分に起きるとは思ってもみませんでした」(浦さん)

 協会から追放された浦さんは、障害者の大会に参加できなくなった。パラリンピック出場の夢も閉ざされた。協会に処分の無効を求める訴訟を13年12月に起こし、健常者向けの大会に出場しながら、先の見えない復帰の日に備え、トレーニングを重ねている。

 では、協会の不正経理疑惑とはどのようなものか。現時点で指摘されているのは、助成金を交付するJPCへの報告書では開催されているはずの強化合宿が、実際には実施されていなかったことなどだ。

 そこで本誌は、助成金を管轄する厚生労働省に情報公開請求をした。開示された「身体障害者体育等振興費補助金」の事業実績報告書によると、協会は12年度は800万円の助成を受けているが、その内容を見た競技関係者は言う。

「12年には4回の強化合宿があったことになっていますが、実際には3回しか実施されていません」

 ほかにも、開かれていないはずの強化委員会の経費が計上されているなど、使途不明金があるという。また、助成金は5年前に比べて倍増したのに、選手からは「遠征費の自己負担が増えた」との不満もある。

 JPCも昨年10月に問題を把握。領収書を調査した結果、不明な点が多いため、協会に対して14年度の765万円の助成金支給を保留し、全容解明を求めた。

 このため協会は、この1月に報告書を再提出した。JPCも所属する日本障がい者スポーツ協会の事務局長は、協会の報告について、

「現在進行中の調査なので、具体的事例について教えることはできない」

 としながらも、

「(最初の報告書の)すべてがシロ(潔白)ということはありえない」

 と、協会に不正経理の疑惑があることを認めた。

 本誌は協会に、不正が指摘されている経理処理の内容についてたずねたが、

「JPCに報告して返答を待っているところで、お答えできません」(協会顧問)

 浦さんを追放した経緯については、

「訴訟中なので回答はできません」(同)

 と言うばかりだ。

 パラリンピック・スポーツを取材するフォトジャーナリストの越智貴雄さんは言う。

「助成金は、選手の強化や競技人口を増やすためのもの。それが運営能力の乏しい団体にわたっても、効果的な使い方はできない。助成金の管理ができる外部の専門家が運営に参加するなどして、選手を第一に考える仕組みづくりが必要です」

 引退の危機に瀕している浦さんの名誉回復なくして、東京パラリンピックの成功はない。

週刊朝日  2015年2月13日号