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 駅近マンションに今、中高年層が熱い視線を注いでいる。最大のメリットはなんといっても健康面。自分たちはもちろん、親世代のケアも見据えている。都市部に住むことを選ぶ志向は60代より70代でさらに強まると指摘するのは、住宅・不動産の情報サイト「SUUMO(スーモ)」の池本洋一編集長だ。

「まだ体力がある60代は『田舎で農業でも』という夢を抱くが、健康への不安を感じる70代になると、医療機関に通いやすい場所がよくなる。町医者では済まない事態に備えて設備が整った大学病院を視野に入れるので、都市部のニーズが圧倒的に高くなるんです」

 株式会社リクルート住まいカンパニー(RSC)の「2013年 首都圏新築マンション契約者動向調査」では、50代以上の半数近くが「駅から徒歩5分以内」を選んだ。300戸以上の大型物件の20階以上の部屋を購入した人の割合もほかの世代に比べて高い。

 耐震性にも優れた近ごろの高級物件は団塊世代の注目の的だ。「プラウド」シリーズで知られる野村不動産が昨年販売したJR立川駅に直結する32階建てのタワマン(全292戸)は即日完売した。70平方メートル、7千万円台中心で、平均坪単価340万円と都心マンションとほぼ変わらない価格にもかかわらず、だ。最多購入層は60代以上という。

「これまでの購入者は30~40代が中心。60代以上が最多というのはこれまでにはない状況」と広報部長の北井大介さんは驚く。立川は駅前に伊勢丹と高島屋があり、多摩地区にはゴルフ場も多い。通勤する必要がなくなった年代には街の魅力や高い利便性が選ぶ基準になるようだ。

 駅近マンションのニーズは地方にも広がる。たとえば広島市。JR広島駅周辺はビジネス街だったが、最近は駅前でタワマン建設ラッシュが起きている。さらに、あるマンションの購入者は全戸の半数強が50代以上だった。丘陵地域を切り開いた土地に建つ一戸建ての住宅からの移住が目立つ。このような中心市街地への移住は長崎市など、地方の主要駅がある街でも多く見られる傾向だ。

「かつては住み慣れた地域と家で静かに余生を過ごすという考えが強かったが、今の60代後半から70代前半は、『いつまでも自分らしく暮らしたい』と願い、土地に縛られない人が増えているんです」(池本編集長)

週刊朝日 2015年2月13日号より抜粋