ホリエモンこと堀江貴文氏は、インターネットが不動産業界の仕組みを変えるかもしれないとこう語る。

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 スマートフォンでモバイルブロードバンドインターネットができるようになって世の中は大きく変化してきているが、その一つの大きな流れが中抜き業者の利益率の低下である。

 不動産仲介業というのは典型的な中抜き産業である。そして規制に守られている。例えば、宅地建物取引主任者の資格がある者がいないと不動産仲介業は営むことができない。そして業界で物件情報をネットワーク化して共有はしているものの、どこも貸主・借り主の両方に課金している。そして大体どこも同じような手数料体系である。

 しかし、スマートフォンの普及が進んで、抜け駆けをして(つまり通常の市場原理に基づいて競争がはじまったということだ)手数料ゼロ円の業態が出てきたのである。

 実質的無店舗営業、営業マンの数を徹底的に減らし、事務コストを徹底的に下げることにより、なんとか利益が出るような業態を考えているようだ。そのひとつが「ヘヤジンプライム」や「お部屋探しサービス Nomad.(ノマド)」というサービスだ。「ヘヤジンプライム」は東京23区の賃貸物件のすべてにおいて仲介手数料が無料である。さらにサイトで見つけた物件を不動産屋に行かずに直接内見できる仕組みも用意している。

 他にも手数料を通常よりも減らしている会社がたくさん出てきている。不動産業界のいわばトレンドのサービスとも言える。また、内見すら外注できるサービスまで出てきている。

 これまでは駅前のいい場所で店頭にコピーした不動産の間取り図を貼っておけば、勝手にお客さんが来店して楽に仲介手数料を取れていたが、今や多くのユーザはネットで検索をしている。しかし、そういったサイトのビジネスモデルはあくまでも既存の不動産業者への送客支援であり、仲介手数料の一部を徴収していたに過ぎない。

 今回の波は根本的に違う。一部検索機能やコンシェルジュ機能などに定額の少額課金はされているが、少なくとも借りるほうには課金しない業態である。実は首都圏では不動産物件はダブついているらしいので、貸主はどうしても借りてほしいということから、積極的に物件情報をPRする方向性なのである。従って貸主から広告費やキックバックという形での収益が当面は大きいらしい。

 しかし、この流れが普通になってくると、さらに進んでシェアハウスとかホテルに近いような不動産をもっとカジュアルに借りる形態に変わってくるかもしれない。これまでは仲介手数料や敷金・礼金などの負担が多く引っ越しの障害になってきたが、引っ越し業も低価格化が進んでいるのと同時に断捨離ブームなどもあって持ち物も少なくなりつつある。半年単位やもっと短い期間での引っ越しも普通になってくるかもしれない。

 私もホテル住まいをしているが、そういうノマド的な生活に対応した、このような業態はもっと増えてくるのだろう。注目したい分野である。

週刊朝日 2015年2月13日号