「殺してみたかった」――。77歳女性の殺害容疑で逮捕された名古屋大学1年の女子学生A(19)。彼女は名大の体育会系のリーダー部(応援団)に所属し、ムードメーカー的な存在で、学ランを着て友人たちとはしゃぎ、あどけない顔を見せる映像もインターネット上に残されていた。その裏で理解しがたい“冷血”な犯行に及んだA。

 その成育歴を追うと、事件の数々の“前兆”が浮かび上がった。

 Aは昨年3月まで、実家のある仙台市のキリスト教系進学校に通っていた。警察の調べに「高校時代、友達に毒を飲ませた」と衝撃的な供述もしていた。実際にAの在学中、同級生男子の視力が著しく低下し、昨年3月に特別支援学校に転校する事件が起きていた。

「目が見えなくなった子のことは噂にはなっていた。Aは高校時代、男子から『薬オタク』とか『薬局』と呼ばれていて、同じクラスの子が被害者だから、怪しいと噂でした。Aも周囲に『警察が来て、話を聞かれた。先生にも呼ばれた』とか言っていたそうです」(高校の同級生)

 Aは高校時代、05年に母親にタリウムを投与して殺人未遂容疑で逮捕された少女が読んでいたと報じられた英国の連続殺人犯についてのノンフィクション『グレアム・ヤング 毒殺日記』を愛読。「何度も読み返している」と内容を同級生に説明していたという。

 この時に事件化していればさらなる悲劇は防げたかもしれないが、そうはならなかった。高校は警察に被害届を出したが、結局、容疑者が特定されないまま事件はうやむやになったのだ。県も事実関係を把握していなかったという。

「当時、県に報告は上がってきていませんでした。今回の報道を見て初めて知り、高校に問い合わせたら『事件に当たらないと判断した』と言われた」(宮城県総務部私学文書課)

 捜査本部は「男子生徒がタリウム中毒だった疑いがある」として調べている。Aが通っていた高校の事務局長はこう言う。

「男子生徒は今年4月から4年制大学に進学すると報告を受けています。当時、学校に捜査がありましたが、(学校には)非はないとされていました」

(本誌取材班=今西憲之/小倉宏弥、牧野めぐみ、小泉耕平)

週刊朝日 2015年2月13日号より抜粋