沖縄県知事選と佐賀県知事選で示された県民の意思を、強気な姿勢で押し返そうとしている安倍政権。

 自民党内には「今の首相の強引なやり方が今後も続くようだと、春の統一地方選で大きく議席を減らす。『衆院選で大勝したから何をしてもいい』という気持ちでいるのなら、大間違いだ」といった批判の声も、上がっている。

 自民党は統一選で、前回2011年並みの1200人強の公認候補を擁立する予定だ。前回、40道府県で第1党を占めたが、今回は衆院選大勝の余勢で、上積みを目指している。

 首長選では北海道知事選や札幌市長選など与野党が激突するケースが予想される。ある選挙アナリストは「首長選での自民・公明の協力態勢は弱体化していて、取りこぼしも起こりうる」と指摘する。

「集団的自衛権の閣議決定など右傾化する安倍晋三首相では、公明党や支持母体の創価学会は支援に力が入らない。国政選挙は自らの党の議席増大のため協力するが、首長選は非協力的。首相が進める怪しげなものへの警戒です。この傾向はドンドン強まるでしょう」

 統一地方選で負けたとなれば、地方議員や来年に参院選を控える国会議員から、安倍批判が噴出、党内の求心力も、政権支持率も低下するおそれがある。

 統一選後の5月には、国民の反発が強い、集団的自衛権の行使に向けた国会論戦も始まる見通しだ。頼りなかった野党第1党の民主党も、新代表の下で安倍攻撃を畳み掛けてくる。そのころには景気も、どうなっているかわからない。

 衆院選大勝後、安倍側近から自民党総裁任期(2期6年)の3期9年への延長論も出ていたと言うが、そんな余裕もなくなってくる。

 政治評論家の浅川博忠氏は9月の総裁選をこう見ている。

「今のところ表立って出馬に意欲を見せる議員はいませんが、これは安倍政権の支持率が好調だから。逆を言えば、低下すれば一気に『安倍おろし』や『対抗馬擁立』の動きが出てくる。石破地方創生相も意欲を見せるでしょう。古賀誠元幹事長は、派閥後継の岸田外相や野田聖子前総務会長擁立に向けて、水面下で動いている。安倍政権は思ったほど盤石ではないのです」

 滋賀、沖縄に続き、1月11日に起きた佐賀の乱は、政権変調のアリの一穴となるのか。

週刊朝日 2015年1月30日号より抜粋