近年、不調が続くタイガー・ウッズ(39)。プロゴルファーの丸山茂樹氏はその要因を“恐怖心”だと分析する。

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 タイガー・ウッズは、一体どこへ向かっていくんでしょうか。

 タイガーは昨年8月、プロコーチのショーン・フォーリー氏との契約を解消しました。僕は、ここまではいいと思ったんです。

 もともとアマチュア時代から、タイガーのスイングの特徴ってのは「2軸」と表現されるものでした。簡単に言うと、体重をまず右に移して、最後に左へ戻す打ち方です。

 それが、プロになって3人目のコーチとして2010年8月に契約したフォーリー氏によって、「1軸」になった。ほとんど体重移動をせずに打つ方法です。09年に起きた不倫騒動からの復活をフォーリー氏に託した格好なんですけど、結局メジャーで勝てないまま、ここまできました。フォーリー氏との決別は「2軸」への回帰を意味していると思いましたから、いい選択じゃないかなと思ったわけです。

 そして新たなコーチとして迎えたのが、クリス・コモ氏。スタンフォード大学時代のチームメートに紹介してもらったらしいですけど、僕はまったく知らないですねえ。正直言って、長続きしないと思いますね。

 みなさん、何だか不思議に思いませんか? 長らく世界のトップに立っていた男が、なんでお金を払ってまで、よく分からない人にゴルフを見てもらわないといけないのか。なんでそこまで、人の話に聞く耳をもたないといけないのか。はっきり言って、僕には分からないです。

 昨年12月、タイガーは自身のホストチャリティー試合である「ヒーロー・ワールド・チャレンジ」で、約4カ月ぶりに実戦復帰しました。腰痛の治療とリハビリに時間をとられていたんですね。その試合で、新コーチのコモ氏とともに取り組んでいる新スイングも披露しました。

 体調不良もあって最下位に終わったことを割り引いてみても、まだまだですよね。確かに「2軸」への回帰を目指しているのは分かるし、タイガー自身も「アマチュア時代のスイング映像を見直してるんだ」とコメントしています。

 そもそもタイガーが勝てなくなったのは、スイングだけの問題なんでしょうか。ドライバーに対する恐怖心があるんじゃないかと思うんです。そこが改善されないと、スイングをいくらいじったって、かつてのタイガーに戻れるかどうかは微妙なところでしょう。

 急に体重移動で打ち始めても、まあ安心感はあるんでしょうけど、そんなに簡単じゃないですよ。ゴルフは、悪い癖から抜け出せないからこそ難しいんです。いいものはなかなか吸収できず、悪いものはどんどん身についちゃうのがゴルフなんですね。タイガーの場合はドライバーに対する恐怖心を体の中からデリート(削除)していくのが先決だと思いますね。

 あとは、ほんとに若いときのスイングをたくさん見て、「ああだったな、こうだったな」って、自分で試行錯誤することでしょうね。新しいコーチは話し相手ぐらいの感じにしといた方がいいと思う。だいたいね、ゴルフ界で名の通った人でもないのに、あのタイガーにもの申すこと自体が変だと思いませんか? そこらへんがアメリカ人と僕らの考え方の違いなのかもしれないけど、僕にしてみたら「???」ですね。

週刊朝日 2015年1月23日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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