昨年11月、柔道日本一を決める講道館杯の男子66キロ級で、大会最年少王者に輝いた阿部一二三(17)。神戸・神港学園高校2年。誰もが認める体幹の強さとキレのある動きで他のシニア選手を圧倒した。その勢いで翌12月には主要国際大会のグランドスラム東京で、世界選手権3連覇中の海老沼匡選手(24)らを次々に破って優勝。しかし当の本人は、

「想定外。勝てるとは思わなかったです」

 小学生のころから指導する同校柔道部の信川厚監督も「うわー、勝ってしまいよった、という感じでした」と笑う。

 本人も周りも驚く快進撃だが、その才能は早くから注目されていた。中学時代は全国大会で2階級制覇し、アジアジュニア・ユースも優勝。高校1年生のとき、階級がひとつ上の73キロ級で“平成の三四郎”こと古賀稔彦さんの長男を決勝で破り、全国制覇を果たした。

「まだ体はできてないけれど、年上の選手に技術がそれほど劣っていると思わない。優ってるとも言えませんが……」

 謙虚さと勝ち気が共存する若き覇者の昨年の飛躍は精神力による面も大きい。

「10月の世界ジュニア決勝での敗退は『技あり』と『有効』を取って集中力が切れた。最後まで戦わなければならないと強く自覚した」

 22歳で迎える東京五輪を心待ちにしていたが、講道館杯に勝ったことで前向きな軌道修正を迫られたともいう。

「ここまできたらリオ五輪を狙います。東京に出るのは当たり前」

 すっと鼻筋の通ったさわやかな顔つきでスター性十分。友人たちとの楽しげなやりとりが溢れるツイッターのフォロワーは5900人を超えた。

「目立つことは好き。ただ柔道以外の部分も見られるようになったと思うので気を引き締めたい。僕は『柔道家』でありたいんです」

 リオ五輪への足掛かりとなる15年の目標はズバリ「1回も負けない」だ。

週刊朝日 2015年1月23日号