「解説情報」は気象庁HPのトップページ→「防災情報」→「火山」の部分にある (c)朝日新聞社 @@写禁
「解説情報」は気象庁HPのトップページ→「防災情報」→「火山」の部分にある (c)朝日新聞社 @@写禁

 登山、スキー、温泉……。御嶽山の噴火以来、冬の計画を立てながら、ふと「火山は大丈夫?」と思った人も多いはず。

「風光明媚(ふうこうめいび)な国立公園も、8割が火山地域にある。日本に住む限り、皆さんが知らないうちにレジャーなどで火山地域に足を踏み入れる可能性は高いのです」

 そう話すのは、火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣・東京大学名誉教授だ。日本には「危ない火山」があちこちにあると言う。

「約30年周期で噴火を繰り返していた伊豆大島(東京)も、前の噴火から30年近く経っている。東北にも、100年、200年休んでいる火山があちこちにある。吾妻山(山形・福島)は警戒レベルが上がっており、岩手山もいつ活発化してもおかしくない。北海道の十勝岳もじわじわと活動が高まっているし、富士山もいつ噴火してもおかしくない」

 現在、気象庁が常時監視をしているのは国内47火山だが、火山噴火予知連絡会は昨年末、それらに加えて十和田(青森・秋田)、八甲田山(青森)、弥陀ケ原(富山・長野)も監視すべきと提言をしている。

 では、私たちはいざというときに、どのように危険を察知するべきなのか。報道などで耳にする「噴火警戒レベル」は、気象庁が2007年から火山活動の状況を踏まえて、とるべき防災対応をわかりやすく伝えるために導入した。5(避難)、4(避難準備)、3(入山規制)、2(火口周辺規制)、1(平常)の5段階となっている。ただし、一概に高いレベルほど気を付ければいい、というわけでもないのだという。

 井口正人・京都大学防災研究所火山活動研究センター長は、こう解説する。

「噴火警戒レベルの2や3のほうが、観光には安全だと私は言っています。レベルが2、3に上がると、立ち入り規制がかけられます。入ったら危ないという境界は、安全サイドに立って判断されているので、警戒区域より外は安全ということ。報道や情報も多くなり、観光客でもわかりやすく、対処がしやすいのです」

 むしろ、問題なのは「警報」ではなく「予報」段階のレベル1の火山だという。

「1では気象庁も自治体も世の中も大して気を付けません。情報もほとんどなくいちばん困るのです。特に危ないのが警戒レベル1で、気象庁が『解説情報』を出している火山です」

 気象庁ホームページにある「火山の状況に関する解説情報」には、警報を出さないまでも、火山性地震など、起こっていることが臨時で掲載される。ところが、警戒レベルは見ても、解説情報には気付いていない人のほうが多い。

 御嶽山が噴火したときの警戒レベルは「平常」を示す1とされていたために多くの登山者が訪れていたが、実は9月11日から噴火当日の27日までに、「火山性地震が50回を超え、地震回数の多い状態」などの「解説情報」が3回出されていた。

「気象庁にとって『警報』はハードルが高く、どうしてもすぐには出ない。レベル1で解説情報も出ている場合は、注意してなるべく避けたほうがよい」(井口氏)

 先の藤井氏も、こう釘を刺す。

「そもそも警戒レベルがあるから必ず噴火を予知できる、と思うのは間違いです。いざ起こった時に出された警報は、本当に危険な時だと従うべきですが、警報が出ないからといって安全なわけではないのです」

(本誌・福田雄一、小泉耕平、山岡三恵、上田耕司)

週刊朝日 2015年1月23日号