近年、目覚ましい発展を遂げる科学技術。堀江貴文氏は今後、それに伴って社会も発展するよう期待を込める。

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 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 2014年は科学技術が大きく取り上げられた年だった。まずは、京都大学の山中伸弥教授が開発に成功したiPS細胞。

 昨年9月、世界初のiPS細胞を用いた再生医療が行われた。加齢黄斑変性という、網膜の中心部である黄斑という部位が加齢により変性することで目が見えにくくなる病気で、治療法は細胞を再生するしかなかった。

 なぜ最初の再生医療の対象となったかというと、iPS細胞の最大の課題であるがん化のリスクが網膜細胞は比較的小さいということ。そして万が一がん化しても、目を取り除けば転移を防ぐことができるということが理由だという。

 これから網膜の治療以外にもiPS細胞が使われることになっていくだろう。京都大学iPS細胞研究所は昨年私も見学してきたが、iPS細胞をより安全に安価に作るための基礎研究からiPS細胞をさまざまな細胞に意図的に分化させるための研究など、いろいろな研究が活発に行われていて、相当なスピードで臨床応用がされていくのではないかと期待している。

 次に青色LEDの実用化に関わった3名の日本の科学者がノーベル賞を受賞したという嬉しいニュースもあった。

 LEDは低消費電力・高効率で光を発することができる半導体だ。また寿命も長いため環境にも優しいのでいろいろな場所で使われてきたが、青色LEDの実用化以前は赤色などのLEDしかなく、使用されるシーンが限定されてきた。

 光の3原色と呼ばれる赤緑青をそろえると理論上は全ての光の色を再現できる。つまり青色の登場が心待ちにされていたわけだ。しかしその道程は険しく、青色を発光できると期待されていたセレン化亜鉛は安定性に欠け寿命が極端に短かったため、到底実用に堪えるものは生まれてこなかった。

 しかし、不純物が多く強い光を発光させることは難しいとされている窒化ガリウムに果敢に挑戦した3名が遂に実用に堪える青色LEDを製造する道筋をつけた。光の3原色がそろったため大型のディスプレーや信号機、そして照明などにも使われるようになり、大きな市場を作り上げた。そしてレーザー発振も可能になった。低消費電力で明るいプロジェクターなども大きなマーケットを作りつつある。

 このように科学技術は大きく世界を変えつつある。スマートフォン革命に端を発したIoT(Internet of Things)革命は、スマートフォン搭載の、低消費電力で高性能・コンパクトで低価格のセンサー類によってもたらされつつある。

 これまでSFの世界だった二足歩行ロボットや自動運転車、ドローンなどが社会インフラ基盤すら変えつつあるのである。

 今年はもっと科学のニュースに親しみ、そして未来を担う子どもたちがより科学に興味を持って取り組むような社会を作っていかなければならないと考えている。

週刊朝日  2015年1月16日号