惜しくも日本映画界の大御所の多くが亡くなってしまった2014年。スター俳優として活躍する中井貴一は、林真理子との対談でその意志を継ぐと決意する。

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林:中井さんはこの間亡くなられた高倉健さんとも親しかったんですよね。

中井:なんて言ったらいいのか……、1994年の「四十七人の刺客」という映画からのおつき合いなので、親しいというよりほんとに後輩です。

林:中井さんがテレビドラマの「風のガーデン」をやられたときには、共演の緒形拳さんが亡くなられましたね。ずいぶん意気消沈してらっしゃいましたけど。

中井:最後にお会いしたのが、亡くなる5日前ですからね。「何言ってるの。そんなわけないじゃない。5日前一緒にいたんだからさ」という感じでした。ドラマをやり終えて、最後の記者会見に出て、打ち上げにも出て、打ち上げのあと、僕は緒形さんを送っていったんです。緒形さんの後ろから「ありがとうございました」と言ったら、振り返って「貴一、またな」とおっしゃったんですよ。それが緒形さんの僕への最後の言葉だったんです。

林:そうだったんですか……。

中井:(声を詰まらせて)「またなって言ったじゃないですか!」っていう思いがすごくありましたね。

林:中井さん、映画界を代表する方々にかわいがられてたイメージがありますよね。

中井:高倉さんにしても、緒形さんも、菅原文太さんも、ほんとにいい先輩たちにいろんなことを教えてもらったという思いがありますね。しょっちゅうお会いしてたわけじゃないけど、自分のポイントごとに会って、アドバイスをしてもらってたような気がします。

林:今度は中井さんが背負っていく世代ですよね。

中井:偉大な先輩たちのようには背負えませんが、俺らが教わったことで守ったほうがいいと思うことは、わかりそうなやつには伝えていこうと思います。伝えることが面倒くさいとか、おこがましいとは思わずに。

林:京都の太秦(うずまさ・東映京都撮影所)なんか行くと、昔からの人がかわいがってくださるんですか。

中井:ついこのあいだまで、NHK BSの時代劇で京都に2カ月行ってたんですけど、そういう人たちがどんどん現場からいなくなって、いつの間にか自分が年齢的にも上のほうになってたりするんです。

林:そうなんですか。

中井:時代劇やってると、後輩に「おじぎの仕方、教えてもらえませんか」って言われるわけ。いままで教えてもらっていた側だから、どう教えたらいいかわからない。だからいまは、教えなきゃいけないから勉強しようって強く思いますね。その意味では昔より貪欲かもしれない。

週刊朝日 2015年1月2―9日号より抜粋