候補者の名前が並んだボードに「花付け」する安倍晋三首相(撮影/写真部・東川哲也)
候補者の名前が並んだボードに「花付け」する安倍晋三首相(撮影/写真部・東川哲也)

 大義なき解散で291議席を獲得した安倍自民党。経済再生に取り組んでから、宿願である憲法改正へ──。その実現に向けて、安倍首相はどのようなシナリオを描いているのか? 政治評論家の浅川博忠氏はこう見る。

「首相は来年春の統一地方選を、重要視していると思います。来年1月以降、補正予算と2015年度予算で景気回復に全力で取り組み、地方選で大勝する。その勢いで再来年夏にある参院選に挑む。ここでも議席を伸ばし、公明党や一部の野党とも協力しながら、参院でも改憲勢力で3分の2の議席を確保しようと考えているのではないか」

 国会による憲法改正の発議には、衆参両院で3分の2以上の賛成が必要だ。衆院はクリアしているが、参院は約30議席足りない。憲法改正に消極的な公明を説得し、一部の野党を味方につけ、参院でも今後、3分の2確保に向けた作戦を展開していく戦略なのだろうか。

 そうした政策や戦略を進めるには人事も重要だ。安倍首相は12月24日召集の特別国会で、第3次安倍内閣を発足させる。

 小選挙区で落選し、比例復活した西川公也農林水産相も含め、全閣僚を留任させる見通しだ。

 時事通信解説委員の田崎史郎氏は、閣僚留任の理由についてこう言う。

「宮沢洋一経済産業相や望月義夫環境相らの政治とカネの問題がありましたが、政権支持率にあまり影響はなく、致命傷にはならなかった。9月に発足させたばかりだし、代えたら逆に『問題隠し』と野党から追及される。安定感を買っての続投でしょう」

 ただ自民党役員人事では、二階俊博総務会長の更迭を求める声が上がっている。今回の衆院山梨2区では、自民候補ではなく、相手の無所属の長崎幸太郎氏を応援し、当選させたからだ。長崎氏はもともと自民出身で、無所属ながら二階派に所属している。

 同党中堅議員は言う。

「山梨2区には投開票日前日に安倍首相も入り、自民候補を応援している。いくら二階さんが党の重鎮とはいえ、処分をしないと示しがつかない」

 そのほか谷垣禎一幹事長、稲田朋美政調会長、茂木敏充選対委員長らは閣僚と同じく9月に就任したばかりで、「続投」との見方が強まっている。

週刊朝日  2014年12月26日号より抜粋