呆れています。いや、別に斬新な映像表現を志す必要はないわけだし、勇気や感動をくれなくてもかまわない。そんなことは期待していない。でも、それにしても、あんまり貧困過ぎる。高校の文化祭で上映される部活CMの方がずっとシャレてますよ。

 自民党のCMは、説明部分を省いて、すべてをキャッチフレーズに落としこんでいる点で、CMとしては良い出来なのかもしれない。でも、そのキャッチフレーズがいけない。「この道しかない」って、これ、国策標語ですか? 「日本を守る。日本を進める。日本を取り戻す」のニッポン連呼もシュプレヒコールじみてて不気味。ま、こういうのが、いまの党内のムードだということなのでしょうが。

 民主党は論外。非正規勤労者役の女性に「夢は正社員になること」と言わせている。オレら有権者をどんだけ低く見積もっているんだ、と、そう思われてもしかたがないセリフだ。ご本人たちだって「夢は野党第一党」とか言われたらムッとしますよね? それと同じです。「夢」みたいな言葉をぞんざいに使っちゃダメです。論外。

 公明党はラジオCMのみ。堅実に現世利益を訴えている。党風ですね。可も無し不可も無し。

 共産党は謎のポップ・カルチャー風味。冒頭で登場する女スパイみたいなキャラがさらに謎。案外、若い世代にアピールするかもしれない。まあ、投票に来ない若い世代に、だけど。

 次世代の党の似非ロケンロールには心底呆れた。歌詞の内容が差別ギリギリの印象操作であるのみならず、アニメのブタ君を何度も何度も一刀両断にする(「タブーを斬る」という含意なのでしょうが)演出があまりにも不吉で残酷。二度と見る気がしない。

 維新の党は両代表のカメラ目線の演説。暑苦しい。

 ダメなCMができるには二つの経路がある。ひとつはCM制作会社が無能な場合、もうひとつはクライアントが専門家に任せ切れないケースだ。各党のCMを見るに原因は後者だろう。

 発注元のセンスの無いオヤジが余計な口出しをして、CMを台無しにしていった様子が手にとるようにわかる。そういうツクリだ。

 威張り散らされながら、ダメな作品を作らねばならなかった制作スタッフの皆さんに、心から「おつかれさま」と言いたい。(寄稿)

週刊朝日  2014年12月26日号