睡眠のとらえ方や睡眠習慣の改善が重要だとされる不眠症の治療。具体的な考え方や睡眠薬について、国立精神・神経医療研究センターで睡眠障害センター長を務める亀井雄一医師に話を聞いた。

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 睡眠が足りているかどうかは、日中の生活で判断します。日中の生活に支障が出ていなければ、睡眠は足りていると考えられます。不眠があると早く寝床につく人が多いのですが、逆に「遅寝早起き」にしたほうが睡眠の質が上がり、不眠に対して効果的です。眠れないときには寝床から出て、写真集を眺めたり、ラジオを聴いたり、ストレッチをしたりするのがおすすめです。

 不眠が続き、日中の生活に支障がある場合は、専門医に診てもらいましょう。日本睡眠学会のホームページでは、睡眠医療・認定委員会の認定による認定医や医療機関の全国一覧を掲載しています。

 不眠症の患者さんは、「一晩で8時間は眠らなければ」「朝まで一度も目を覚まさずにぐっすり眠りたい」という思いに駆られがちです。年をとるとからだと同じように睡眠も年をとり、若いころと同じようにぐっすりとは眠れなくなってきます。年をとると睡眠も変化すると理解することが大切です。

 また、睡眠習慣の改善として、起床時間を一定にすることも原則です。起床が遅くなると睡眠リズムが乱れます。何時間眠れたかにかかわらず、休日も同じ時刻に起きることが、寝つきを安定させます。

 睡眠薬を使った治療では、ベンゾジアゼピン系が広く使われています。脳の働きを鎮静させて睡眠へと誘う作用をもち、複数の種類が発売されています。

 ラメルテオンは、比較的副作用が少なく安全性の高い睡眠薬ですが、効果もやさしいという特徴があり、私は軽い不眠症の人や副作用の出やすい高齢者に処方しています。

 スボレキサントは従来とは異なるタイプの新薬で、脳の覚醒を少し抑えることで睡眠へと移行させます。副作用や依存性が少ないことや、自然に入眠できることなどが期待されています。

 原則として睡眠薬は、不眠症の初期段階から適切に使って早期に“卒業”することが大切です。上手に活用していきましょう。

■日本睡眠学会ホームページ http://jssr.jp/

週刊朝日 2014年12月19日号