作家でコラムニストの亀和田武氏が、「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)が巻き起こしたヌードブームの危うさを語る。

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 ヌードの時代が到来している。「週刊プレイボーイ」11月10日号は、今年の写真界の最大の事件はヌードだったと分析し、特集を組んだ。

 こんな一節が。「多くの写真・カメラ専門誌で大々的にヌード特集が組まれ、そこから派生した別冊は売り上げを伸ばしている。週プレも負けてはいられない」

 週プレを本気にさせたこのブームは、昨年11月に刊行された「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)特別編集の「NUDE!」から始まった。あれから1年。「アサヒカメラ」は再び特別編集「ヌードと写真」を刊行した。

 沢渡朔が撮るAV女優たちが、今回もメインだ。表紙と巻頭のモデルは川上奈々美。若手写真家の注目株、川島小鳥も新作を掲載しているが、川島との対談で、沢渡はモデルの川上の明るさを語る。

 とはいえ、「写真で心の中なんて写せるわけじゃないし、軽い感じで撮りたかったから。歌謡曲っぽい感じがないでしょ」と狙いをも明かす。

 みうらじゅんの秘蔵エロスクラップにも大きく頁を割いた。妄想を刺激された雑誌のヌードを切り抜きスクラップ・ブックに貼る。何が彼をその作業に駆りたてたのか。

 匿名という言葉が目を引く。写真には“めくるめくエロス”など煽りコピーが付く。「あれが、許せなくてね」と、みうらさん。「まず、あれを切り取る作業です。カメラマンのクレジットとか、モデルの名前すらいらない。一度匿名にするためにカットするんです。匿名にすることでやらしさが出ますから」

 巨匠カメラマンと有名AV女優の共作でブームに火はついた。しかし固有名詞を前面に出したヌードはエロを保てるか。エロスに変質しかねない危うさが指摘されている。

週刊朝日  2014年12月19日号