堀江貴文氏は、コミュニュケーション能力が身につけば楽しい人生を送れるとこう語る。

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「一億総中流」と言われた時代が終わり、ホームレスやネットカフェ難民が増え、路上売春や出会い系サイトを利用した売春をする女性も増えていて、負のスパイラルが起こっているらしい。

 とはいえ、今の時代の貧困は飢え死にするタイプのどうにもならない絶対的な貧困ではない。むしろ相対的な貧困である。生活保護制度があり、適切に保護を受けることができれば飢え死にすることはない。

 だが、稀にプライドや世間体を気にしたり、自治体の窓口での対応ができずに生活保護を適切に受けられないコミュニケーション障害気味の人がいたりする。

 これは結局、教育の問題に帰結すると思うのだ。「他人に迷惑をかけてはいけません」「周りと協調して動きなさい」的な教育を叩き込まれるからであり、自分一人でなんとかしようと悩んだ揚げ句、誰にも相談できないで袋小路状態になってしまう。

 そもそも現代とは飢え死にする時代ではなく、嫌な労働をして鬱になるくらいなら好きなことをやって遊んでいればいいものを、教育のせいで真面目に親の言うこと、先生の言うことを聞いて無理するからダメになっていくのだ。

 処方箋はやはりコミュニケーション能力を高めることだろう。他人は自分と同じように傷つきたくないから自分からリスクをとってコミュニケーションしようとしない。

 しかし、そこにあるリスクは、実はその場でちょっと恥ずかしい目に遭うという、よく考えればどうってことのない小さなリスクなのである。この辺のコミュニケーション向上に関してはアドラー心理学を勉強すると良い。

 最近、私の著書『ゼロ』の編集チームがベストセラーを出した。『嫌われる勇気』という本だ。「嫌われる」ことを恐れずに対人コミュニケーション能力を高めることが大事なのである。それに関連して嫌な労働をしてしまうと、その働いている場はブラック企業だ、ということになってしまう。

 eコマース大手アマゾンの倉庫で本やDVDなどの商品をピッキングする仕事があるのだが、退屈な仕事なのは間違いない。そういう職場ではブラック労働批判がかならず噴出してくる。アマゾンも例外ではなかった。経営陣はロボットの開発企業を買収して倉庫を完全に無人化しようとしているらしい。

 ピッキングはこれまで人の労働に頼ったほうがコストが安いとして自動化されていない分野であるが、昨今のブラック企業批判からか、ついにロボット化を実現させるらしい。

 もちろんスマートフォンによって各種センサー類が安価に手に入るようになったことも見逃せない理由だ。自動運転車やドローンによって物流も自動化されアマゾンは完全に自動で運用されるようになるのではないだろうか。

 そうなったときにはコミュニケーション能力をもって臨機応変に新しいおもしろいことをできる人が人生を謳歌することになるだろう。大事なのは気の持ちようなのである。

週刊朝日  2014年12月19日号