認知症が社会問題となって久しいが、認知症の本人や家族を取り巻く問題は山積している。フジテレビ系「スーパーニュース」のメインキャスターを務める安藤優子さんの母、みどりさん(89)は、約15年前に認知症を発症した。一人暮らしのみどりさんを安藤さんらきょうだい3人が支える生活を経て、6年前から民間の高齢者施設で暮らしている。認知症の家族との関わり方について聞いた。

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 つい先日、母は89歳の誕生日を迎えました。ホームの一室に親戚一同が集まって、大好きなうなぎを食べてお祝いしました。そのままでは食べられないので、ペースト状にしましたが、ぺロッと食べてくれました。認知症は進行していますが、調子がいいときは私たちの名前を言ったり、言葉を言ってくれたりしますし、機嫌がよければにっこり笑ってくれます。

 母が一人暮らしをしていた時期は壮絶でした。犬の粗相を始末できなかったり、冷蔵庫の中で大量の食料を腐らせたりして、家の中はぐちゃぐちゃ。私たちきょうだいではどうにもならなくなり、施設への入居を決断しました。

 

 施設に入居してもらうことをためらう方も多いと思います。母も、入居当時は、自分の家があるのに住めないという怒りの感情が強く、抵抗もすごかった。だから、今でも「入れてしまってごめんね」という感情がどこかにあります。

 でも、施設にお願いしていることを私は恥じていません。「ママのことは心配しているんだよ」という気持ちは変わりませんから。今も、私たちきょうだいのうち誰かは、できるだけ母のところに行って一食はごはんを食べさせています。毎日関わって、母を見守っていく。施設に入れたら終わりじゃありません。母らしく生活できるように考えています。

 第三者に介護に関わってもらうことをためらう必要はないと思います。

 たとえば入居当初、私から見える母は怒りで鬼のようでしたが、施設の職員が見る母は違いました。「お母さん、笑顔がすてきですね。かわいいですね」と。そう言われて、母は昔と変わっていなかったんだと気づかされました。第三者が入って、私たちの心に、母を見直すゆとりを持たせてくれたのです。あのまま仕事以外の時間、四六時中、母と向き合っていたら、崩壊していたかもしれません。

 ご家族が認知症になると、絶望的になることがあると思います。あのやさしかった母は、毅然とした母はどこへ行ってしまったのかと、私も失望しました。病気のせいとわかっていても受け入れられず、無力感に襲われることもあります。でも、自分やご家族を責めないでほしい。どこかに必ず「らしさ」が残っていると信じてほしいと思います。

 そういう余裕を持つためには、頼れるものはなんでも頼る。使えるサービスは全部使ったほうがいいと思います。申し訳ないと思ってはダメ。そうやって煮つまらないことが大切です。

週刊朝日  2014年12月12日号