「紙すき」。「縦揺(ゆ)りに横揺(ゆ)りを加えるのが本美濃紙の特徴」(豊美さん)。繊維が縦横に整然と絡み合い美しい和紙になる(撮影/門間新弥)
「紙すき」。「縦揺(ゆ)りに横揺(ゆ)りを加えるのが本美濃紙の特徴」(豊美さん)。繊維が縦横に整然と絡み合い美しい和紙になる(撮影/門間新弥)
「ちり取り」。川屋と呼ばれる、井戸水が流れる作業場で、こうぞの内皮に付着している塵(ちり)やごみを手でひとつずつ取り除いていく(撮影/門間新弥)
「ちり取り」。川屋と呼ばれる、井戸水が流れる作業場で、こうぞの内皮に付着している塵(ちり)やごみを手でひとつずつ取り除いていく(撮影/門間新弥)
本美濃紙製品(66.6×97センチ。1枚2千円程度)。障子紙を主として日本画用紙、和帳などに使われる(撮影/門間新弥)
本美濃紙製品(66.6×97センチ。1枚2千円程度)。障子紙を主として日本画用紙、和帳などに使われる(撮影/門間新弥)

 長良川の支流、板取川流域に美濃和紙のすき屋が集まる岐阜県美濃市蕨生地区がある。すき屋のなかでも、「原料はこうぞのみ」「薬品漂白を行わない」などの指定要件を満たした本美濃紙を作る所は数軒しかない。

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「登録はすごく名誉なことだが、同時に重圧も感じる」

 そう話すのは、同地区の美濃竹紙工房の鈴木豊美さん(62)。約20年前に義父である竹一さんから紙すき技術を受け継いだ。

 竹久さん(65)は、定年を機に5年前に紙すきの道へ。妻の豊美さんに弟子入りした。「自分たちが作り上げた技術ではないからこそ守りたいと思った」

 終戦直後には千人近くいたといわれるすき手も、今では8人しかいない。竹久さん夫婦の長男(33)は会社員。「継いでくれ」と言ったことは一度もない。

「紙すきは人に言われて続けられるものではない。いい紙を作る親の背中を見せ続けていきたい」(豊美さん)

週刊朝日  2014年12月5日号