2012事務年度(12年7月~13年6月)で、相続財産として申告されたトップは土地だ。全体の45%、5.4兆円にのぼる。続いて、現金・預貯金等が25%、3兆円と第2位になっている。

 ところが、相続税についての税務調査を受け、申告漏れを指摘されるケースは、現金・預貯金等がトップで37%、1236億円にのぼるのだ。

 保有の多い不動産を抑えて、なぜこれほどまでに現金・預貯金が指摘されるのだろうか。実はこの大半が、いわゆる「名義預金」と呼ばれるケースなのだ。

 親が子ども用に積み立てをしていた子ども名義のお金を、「もらう側が贈与に合意していない」として、税務署に摘発されてしまう。これはそもそも親が、子どもに黙って子ども名義の預金口座にお金を振り込み、通帳を保管するため指摘されてしまうというものだ。

 よかれと思って親がやったことが、後から相続税という形で子どもに大きな負担を強いる結果にもなりかねないというわけだ。

 子どもに現金を残しつつ、相続税は最低限にしたいなら、「贈与契約をしっかり結ぶ形で親子の双方が合意して、生前贈与をすることが大事です」と、弁護士と税理士の二つの資格を持つ、東京弁護士法律事務所代表の長谷川裕雅さんはアドバイスする。

 たとえば改正後の相続で、相続財産2億円(法定相続人は妻と子ども1人)の場合、生前贈与をすることで、どの程度効果があるのか。

 いっさい生前贈与をせず、2億円のままだと、残された家族に相続税が3340万円かかってしまう。生前贈与を5千万円して相続財産を1億5千万円に圧縮すると、相続税は1840万円となり、1500万円も減らすことができる。相続対策とは、いかに財産を減らすかが基本とよくいわれるが、生前贈与はその典型的な対策といえるだろう。

 自分で毎年贈与をするのが面倒という人には、信託銀行などの金融機関に相談すれば、生前贈与を無料で代行する商品もある。これは贈与をしたい人からまとまった資金を預かり、年に1回、贈る側ともらう側の意思を確認したうえで贈与手続きを代行するというもの。贈与金額や贈与する人を年によって変えることができるのも魅力だ。

週刊朝日  2014年12月5日号より抜粋