安倍政権は来年10月の消費税10%への引き上げを見送った。増税延期で一安心といったところだが、国民の生活はますます苦しくなりそうだ。2017年4月まで日銀による金融緩和が続けば、円安は止まらず物価高が襲う。賃金は一向に上がらず、将来世代の負担も増すことになる。

「海外逃避」のリスクも浮上してきた。

 東短リサーチチーフエコノミストの加藤出氏が言う。

「マイナス金利や借金増が続けば、富裕層は海外に預貯金を逃がしはじめるでしょう。すると、銀行は国債を買うためのお金がなくなっていく。頼みの綱は、海外投資家だが、買ってもらうためには金利を高くするしかない。そうすれば、急な金利上昇も否めません」

 さらに、将来世代に重くのしかかった借金に嫌気が差し、若者が海外に逃げる可能性もある。

「将来世代に財政負担が重くのしかかることを『財政的幼児虐待』といいます。これが進むと、グローバルに働ける力のある人ほど国外に出ていくでしょうね。となると稼ぐ力のある人がいなくなり税収も減る。財政赤字が増えるばかりです」(加藤氏)

 再増税の時期は、17年4月。政府は、景気や家計の支援策として、一時給付金、地域振興券など商品券の配布を経済好転の起爆剤にと検討しているようだが、効果はありそうにない。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、

「そんなことをしても、一時的な所得の増加と感じるだけ。消費刺激効果はきわめて小さい。商品券を用いた支出は現金支出を代替するだけで、支出総額はほとんど増えません」

 と手厳しい。

 17年4月まで日銀は金融緩和を続け、緩和のたびに国の借金は増えるだろう。さらに円安は進み、格差は広がる可能性がある。財政的幼児虐待も避けられそうにない。

 安倍首相は「さらなる延期はなく、どんな経済情勢でも10%に引き上げる」と公言しているが、

「次も延期するんじゃない?」

 そんな声が市場関係者から上がっている。17年4月までに景気が回復していない可能性もある。仮に再増税を延期した場合、日本売りとなる可能性も否めない。株、国債、為替がトリプル安になるかもしれない。

「欧州各国に比べて日本の消費税は低い。引き上げるポテンシャルがあるだけに、これまで日本売りのリスクは低かった。その信用が崩れるリスクがないとは言い切れません」(BNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏)

 アベノミクスは崩壊寸前だ。

週刊朝日  2014年12月5日号より抜粋