12月14日に行われる総選挙に関して、作家の室井佑月氏がこう持論を展開する。

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「国民に信を問う」とかなんとかいって、解散・総選挙になるみたいだけど、ほんとうに国民に信を問いたければ、こんな年末になって選挙はないよな。

 むしろ国民にいろいろ問われたら面倒だから、年末のクソ忙しい時期に選挙をするんだろう。600億円から700億円もかけて。そんな大金をかけるんなら、せめて国民が足を運びやすい時期に選挙したらどうだ。その大金の出所は国民の血税なんだし。

 もう最初から嘘をつかれている気分になる。

 そもそも年末のバタバタ総選挙の目的は、先延ばしにすればするほど、自分たちの生活の辛さに気づく国民が増えて反発してくるかもしれないから、今のうちに早くしたい、それだけなんじゃないか。

 生活が辛くなる国民が増えるとわかっているなら、その対策を立てるのが政治家の仕事だと思うけど、そっちは放っておかれる。一部の国民にとっては生きるか死ぬかの増税が、先延ばしで勝負!

 って完全にゲーム気分だろ。

 これから新しい政治資金収支報告書が出てくるから、解散・総選挙に打って出て、そのドサクサでもみ消してしまえ!という思惑もある、なんて話も聞いた。

 政治とカネの問題については、与党だけでなく野党からも出てきている。となると、やりたい放題の与党と対決する野党なんて図もプロレスに見えてくるわな。

 つーか、税収が足りないから福祉などにカネがまわらず、今、苦しんでいる人がいるわけでしょう。

 
 デタラメに使われている政治家の政治資金だって、選挙にかかる費用だって、もとを正せばうちらから搾り取った税金だ。ならもう、衆議院議員なんていらないんじゃないかというのは、乱暴な意見であろうか。

 選挙のときの地元向け発言と、党の公約とが違ったりする議員は多い。かえって現場が混乱するだけじゃん。どうせ党に逆らってまで地元を考える人なんていない。党の指示通りに動く。次の選挙を考えるから。ま、考えるのは自分のことだけ。

 地元の人は「力のない人に票を入れてもしょうがない」という思いが染み付いてて、力のあるほうに票を入れる。毎回毎回、騙されるのに、懲りない。

 うちらが嫌がる法案も、議員だけの多数決で決められる。どこが地元のどの議員が、結果、地元を裏切ったなんてことは、あまり報道されない。うちらの耳に入ってきづらい。

 もうさ、地元のことは、その都道府県の知事の決断で良くない? 地元選出の衆議院議員の歳費も、そのまま自治体に入ったほうが。

 陳情の窓口がたくさんあればあるほど、うちらのカネがかすめ取られる気がする。正しく使われず、誰かの懐を温めてるだけのような。

 あたしがいっていることは、民主主義を壊すような意見かしら。けど、今はまともな民主主義かしら。国民が主となり、この国は動いているのかしら。

週刊朝日  2014年12月5日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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