最近、高卒後すぐにプロゴルファーになるケースも多いが、プロゴルファーの丸山茂樹氏は、大学進学を勧めるという。その理由は?

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 惜しかった。いや、惜しすぎたと言った方がいいでしょうね。ヒロシです。岩田寛(33)ですよ。

 米PGAツアーの世界ゴルフ選手権シリーズ「HSBCチャンピオンズ」(11月6~9日、中国・上海)。最終日最終組で回ったヒロシは、1打届かずに、優勝したバッバ・ワトソン(米)、ティム・クラーク(南アフリカ)とのプレーオフに進めませんでした。最終18番で3.5メートルのバーディーパットが入っていれば……。電話で話しましたけど、「悔しい、のひとことです」と。よく分かります。でもこれで、ヒロシの目指す米ツアー本格参戦へ複数の道ができました。

 もともとヒロシは12月に米下部ツアーの最終予選会の受験を決めていました。ここで来季の下部ツアー参戦を決めて、シーズン終わりの入れ替え戦で翌シーズンの昇格を狙うのが一つ。それから、今回の試合で3位タイになって38万ドルあまりの賞金を得ましたから、この先、米ツアーにスポット参戦してポイントを重ね、シード権を手にするのがもう一つ。2015~16年シーズンの本格参戦を見据えられる立場になったのです。

 ヒロシとは、5年前の1月にホノルルであった米ツアーのソニー・オープンで一緒になってから、よく話をするようになりました。試合で同じ組になると、いろいろ質問をぶつけてくるタイプでね。

 以前は非常にキレやすいタイプでした。デビュー当時なんて、もったいない試合がいくつもありました。納得いかないことがあると、すぐにキレて、やる気を失ってしまいました。感情をコントロールできるようになったからこそ、今年9月に日本ツアーで初優勝ができましたし、今回の躍進もあったんだと思ってます。

 ヒロシの優れているのはパッティングですね。勝負どころでしっかり打ってきますから。パットに関しては、いい感性を持ってます。誰よりも練習する選手ですしね。せっかくのチャンスなんですから、周囲の人にしっかりとアドバイスをもらいながら、米ツアー本格参戦に向かって、貪欲(どんよく)に突き進んでほしいです。

 話は変わります。10月末に大学ゴルフの全国大会である朝日杯(個人戦)と信夫(しのぶ)杯(団体戦)がありましたので、大学ゴルフの話を少々。

 今年の男子の信夫杯は、東北福祉大が2大会ぶり13度目の優勝を果たしました。僕は川岸良兼さんに憧れて日大に入りましたけど、当時の日大にとって、信夫杯ってのは特別な大会でした。なにせ1973年から25連覇。僕の在籍した4年間もすべて優勝できましたけど、「連覇を止めてはならない」というプレッシャーが重くて、重くて。

 でもその目標があったからこそ、亡くなられた竹田昭夫監督の下、先輩、同級生、後輩と一緒に毎日頑張ってこられました。ゴルフって結局は個人スポーツなんですけど、大学時代の経験があったおかげで、プロになってから団体戦でも活躍できました。

 大学を経ずにプロになる人も増えてきました。でも僕は大学進学を勧めますね。焦ってプロになっても尻すぼみになる可能性が高いし、何より大学時代のゴルフ仲間は何にも代えがたい財産になりますから。

週刊朝日 2014年11月28日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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