早産治療薬「日本でも使用中止を」専門家が警告 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

早産治療薬「日本でも使用中止を」専門家が警告

このエントリーをはてなブックマークに追加

「塩酸リトドリンは、β2刺激薬という薬の一種で、本来は喘息の薬です。喘息では、収縮した気管支を拡張するためにβ2刺激薬を使用していますが、β2刺激薬の中で、その作用が比較的子宮だけに限られるという名目で厚労省が早産治療薬として認めたのが、塩酸リトドリンなのです」

 水谷医師は、今回のEUの措置を受けて、日本でも使用を中止すべきだと主張する。

「私自身は患者さんに塩酸リトドリンを使っていませんが、名古屋大学教授時代、私の教え子である産婦人科の医局員たちが塩酸リトドリンを使うのを黙認してきてしまいました。その反省も込めて、今からでも、この危険な薬の使用中止を呼びかけたいのです」

 EUでは、これまで承認されていたものが昨年取り消されたという状況だが、そもそも米国では承認されていない。米国では、塩酸リトドリンと同じβ2刺激薬「テルブタリン」で、胎児の心筋壊死(心臓の筋肉が死んでしまうこと)が報告されており、テルブタリンの早産への使用を最長72時間までに制限している。

 早産治療薬は、国によって承認されている薬が異なり、日本では塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムの2種類のみ。この硫酸マグネシウムも塩酸リトドリンよりも強い心臓毒性などの副作用があることが知られている。

 ある大学の薬理学教授はこう話す。

「世界中で使われている薬理学の教科書には、子宮の収縮を抑制する方法として、6種類の薬があると書いてありますが、どれが優れているという順位づけは確立されていません。つまり、早産治療薬として、効果があって副作用も少ない薬と科学的根拠を示された薬はなく、各国でその選択や位置づけは異なっているようです」

 早産治療には、ベストな薬がないといえる。にもかかわらず、「ほかに選択肢がないから」「保険適用になっているから」という理由で、塩酸リトドリンは多くの産科で第一選択薬として使用されている。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が作成している「産婦人科診療ガイドライン‐産科編」にも切迫早産の治療法として記載されている。

 日本早産予防研究会代表で日本医科大学多摩永山病院女性診療科・産科の中井章人医師は、塩酸リトドリンの位置づけについてこう話す。

「切迫早産に対する緊急処置としては有効なので、この薬がないと産科医は困ります。ただし、子宮収縮抑制薬であって、予防薬ではありません。最後の切り札という位置づけで、安易に投与するべきものではないでしょう。そのため、本来はおなかの張りの強い人に入院して点滴で投与するものであって、外来で予防的に内服薬を長期間処方するのは好ましくありません」

週刊朝日  2014年11月28日号より抜粋


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい