日経平均は2万円を超えるのか (c)朝日新聞社 @@写禁
日経平均は2万円を超えるのか (c)朝日新聞社 @@写禁

 金融市場にサプライズを巻き起こした日本銀行の追加金融緩和策。はたして日本の景気にどう影響するのか。本誌は、「取材一切お断り」のプロたちに緊急取材、誌上座談会を行った。

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絶対匿名、プロ4人のプロフィル
Aさん(30代) 某通信社の証券担当記者。兜町の人脈は幅広い
Bさん(30代) 準大手証券の若手ストラテジスト。相場分析、銘柄発掘に定評
Cさん(30代) 大手外資系証券アナリスト。在日歴10年以上のアメリカ人
Dさん(40代) 銀行系証券ディーラー。日々相場と格闘する相場師

――為替はどう見ていますか。約7年ぶりに、一時1ドル=115円台になりました。

C:当分の間は120円を予想しているけど、それ以上になる可能性は十分あるね。米国は緩和を終了する一方、日本は緩和を拡大している。通貨の供給量を比べると、円安はどこまでいくのか想像がつかないよ。

B:米シカゴ市場の「通貨先物」の統計によると、ヘッジファンドとみられる投資家による円売りのポジションは現在、第2次安倍政権が始まって以降で最高だった水準の半分以下。まだまだ売ってくる余地は大きいです。

C:円安が進めば、大企業の業績は上向くため、日本株は上がっていく。消費税10%が決まって一時的に下がっても長期的には徐々に上昇していくと見ているよ。私たちの会社では16年に2万4千円になると予想している。

A:2万円超えか。

C:日銀が国債を大量に買っているから、日本の生命保険会社などは国債を買うことができないのです。その代わりに外国の債券を買い始めている。外国の債券を買うためには、円を売って外国の通貨を買わないといけない。この動きも円安を後押ししていますね。もはや終わりのない円安の時代に入ったと思う。

――では、何を買えばいいでしょうか。

A:想定している為替レートを現在の水準より円高に設定している企業は狙い目。1ドル=110円以下で今年度の業績予想を出しているところもある。こうした企業は業績が上振れる。たとえば、工業用ミシン世界1位の「JUKI」などはどうでしょうか。

B:円安になれば訪日する外国人は増えます。家電量販店に行くと今は中国人ばかり。免税品店事業を行う「ラオックス」などに注目しています。

C:単純に相場が上がると儲かる証券会社、インフレの恩恵を受ける不動産会社でいいよ。

――株や為替について強気の見方が出ましたが、景気はどうでしょうか。物価や消費税は上がる一方、賃金は上がらずに国民の生活は苦しくなるばかりです。

D:株価は実体経済から乖離(かいり)するだろうね。株を持っている金持ちや大企業に勤める人はいいけど、庶民はしんどい。政府はその対策をどうするか考えないといけない。これは米国でも問題となっていて、きちんと対策を打てていないのが現状。安倍政権は格差是正をどうするのか。このままだと支持率に影響してしまう。「円安→企業業績が上向く→賃金が上昇→消費が上向く」といった形で景気がよくなるのは非常に時間がかかるから。

B:国民は870兆円を現預金として保有したままです。「死に金」となっているこのお金をどうするかを考えないと。日銀の緩和で短絡的に盛り上がるのはいいですが。

D:そうなんですよ。その現預金のほとんどを高齢者がため込んでいる。銀行に預けられたこのお金は、国債を購入する資金に使われてきた。お金が若者に流れない仕組みになっている。たとえば、そうしたお金が若者が立ち上げたベンチャー企業に投資する資金に使われてもいい。

C:そうですね。日銀が国債を大量に買っているのは、「民間企業に融資をまわしてください!」といったメッセージだと思う。

――しかし、日銀が国債を大量に買うのは秩序的に問題ないのでしょうか。日銀が国の借金の穴埋めをする「財政ファイナンス」と見なされれば、世界的な信用を失うのでは。

D:もちろん、そうです。しかし、先ほど指摘があったように日本はため込んだお金がある。日本の国債はほとんど日本人が買っている。このため、問題を先送りできているから、今はまだいい。先送りしている間に、構造改革などを進めることができるかどうかが大事です。

C:政府は「第3の矢」に関しては、ほとんど何もやっていない。外国人投資家たちも、それを非常に気にしていますよ。TPP(環太平洋経済連携協定)締結でもいい、解雇規制の緩和でもいい。とにかく何かを形にしないとダメ。そうしないと、4、5年後の日本経済はどうなっているか怖いよ。海外旅行に行くと、貧乏な思いをすることになるかもしれない。

週刊朝日  2014年11月21日号より抜粋