「認知症」になっても安心な街 地域でみるため徒歩圏内に施設つくる 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「認知症」になっても安心な街 地域でみるため徒歩圏内に施設つくる

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 数多くある市区町村の取り組みのなかで、徹底した医療と福祉、暮らしの連携システムを構築し、地域で認知症の人をみ始めているのが、埼玉県和光市だ。

 同市は人口の6人に1人が高齢者。約15%という高齢化率は他の市区町村と比べて高くないが、団塊の世代が非常に多く、近い将来、もっとも高齢者の多いまちになる可能性がある。

「長寿あんしんプラン」を掲げて認知症対策をおこなう同市では、どんな取り組みがなされているのか。和光市役所から徒歩5分。小規模多機能型居宅介護(通い、泊まり、訪問を組み合わせた介護サービス)と、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)が併設されたサポートセンター広沢を訪ねた。

 この日、介護サービスを利用していたのは、男女7~8人(65~92歳)。昼時だったので、テレビを見ながらのんびりと昼食を待つ。

「利用者さんの自宅からここまでは徒歩圏内なので、1日に何度も行き来する方もいます。今日も朝からすでに2度ほど行ったり来たりをされた方がいますよ。もちろん、自宅まで安全に戻ることができる場所まではスタッフが一緒に行き、様子を見守ります」(同施設の介護支援相談員・石崎志津子さん)

 2階のグループホームも見学した。下の通所サービスより少し認知症が進んだ数人の利用者が、テレビから流れる演歌歌手の歌に聞き入ったり、うつらうつらしたりしていた。

 いずれも、よくある一般的な施設の光景だ。だが、通所系の介護サービスとグループホームを併設したところに和光市のこだわりがある。同市の認知症対策にあたる東内京一・保健福祉部部長は言う。

「二つの施設を併設することで、病気が早期で症状が軽いときは通所の施設を利用してもらい、進行して通所では対応できなくなった場合、併設のグループホームを利用してもらうことができます。こうすると環境もスタッフも変わらないので、“リロケーションダメージ”(環境の変化で不安や混乱が生じて病気が進行したり、今までになかった症状が起こったりすること)を最小限に防ぐことができるのです」

 市内には、こうした併設施設が5カ所のほか、デイサービスとグループホームの併設も1カ所ある。しかも、同市の場合はこうした介護施設を計画的に整備しているのが、大きな特徴だろう。東内部長が言う。

「65歳以上の高齢者に調査票を配り、身体面で不自由なく生活できているかどうかとか、一人暮らしかどうか、借家か持ち家かなどを聞きました。そしてその回答を分析して、“課題の見える化”をしました」

 認知症のリスクが高い高齢者が多く暮らす地域に、優先的に施設を誘致していったという。

 環境整備と同時におこなわれているのが、一人ひとりの状況に合ったケアプランの検討だ。

 同市では月に2回、医師(認知症サポート医)や看護師、作業療法士、介護福祉士、ケアマネジャーなど専門家が集まる「和光市コミュニティケア会議」を実施している。ここで話し合われるのは個別のケアプランだ。症状が進行してこれまでのプランではうまくいかない例、暴言や妄想、徘徊といった周辺症状(BPSD)が出てきたため別の方法を考える必要がある例などをおもに扱う。

 前出の石崎さんは、これらの対策が次世代の安心感につながっていることを、現場にいて実感しているそうだ。

「おばあちゃん、おじいちゃんの様子を見て、“自分たちの老後も安心だね”と話す利用者のご家族も少なくありません」

週刊朝日  2014年11月21日号より抜粋


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