湯豆腐のたびに使うのがうれしい 京都伝統工芸の豆腐すくい京金網の歴史は古く、平安時代までさかのぼる。それに、南禅寺参道では江戸時代から豆腐料理が有名。この二つの伝統のかけ算から生まれる「とうふすくい」は、まさに日本の「用の美」と言えよう。先日、金網つじはパリの高級百貨店ボン・マルシェに期間限定出店。パリジャンたちに大好評で迎えられた(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
湯豆腐のたびに使うのがうれしい 京都伝統工芸の豆腐すくい京金網の歴史は古く、平安時代までさかのぼる。それに、南禅寺参道では江戸時代から豆腐料理が有名。この二つの伝統のかけ算から生まれる「とうふすくい」は、まさに日本の「用の美」と言えよう。先日、金網つじはパリの高級百貨店ボン・マルシェに期間限定出店。パリジャンたちに大好評で迎えられた(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
柔らかい豆腐が滑らない(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
柔らかい豆腐が滑らない(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
柔らかい豆腐が滑らない(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
柔らかい豆腐が滑らない(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)

 週刊朝日で好評連載中の「美意識ある生活」。生活品評論家の東海左由留(とうかい・さゆる)さんが厳選したひと品を紹介している。東海さんは日本とヨーロッパで「生活をより豊かに」をテーマに様々なアイテムやサービス、ライフスタイルを取材。自腹で購入し、時間をかけて使用感を検証している。

【美意識ある生活 他の逸品はこちら】

 今回は、とうふすくいを紹介する。

*  *  *

■微妙に不規則。その「ゆらぎ」が与えるものは

 緻密に計算された規則正しさには緊張感を伴った清々しさがある。そこにわずかな「ゆらぎ」があると、無機質な冷ややかさが一変し、温かな表情を見せる。清々しさと温かさ。この相反する要素を見事に一体化しているのが、京都にある「金網つじ」の「とうふすくい」。写真の菊丸と八角は銅線やステンレス線を「菊出し」という技法で、亀甲模様を中心から外に向かい手で編んでいく。こうした熟練の手仕事による微細なゆらぎに心地良さを感じられるのが、日本人らしい美意識なのではないか。

 このゆらぎ、実は「とうふすくい」の使いやすさをも創り出している。木綿豆腐はもちろん、ふるふると柔らかい絹ごし豆腐でも、網表面が微妙に不規則だから滑り落ちず、そのままの形ですくえる。すくったときの手に伝わる感触と重み、湯豆腐のたびに思わずほくそ笑んでしまう。人は「もの」から多くのことを感じ取る。それゆえ、日々の道具選びを大切にしたい。

<今日の逸品>
とうふすくい 八角
とうふすくい 菊丸
どちらも4700円(税別)
問い合わせ先:金網つじ

※金網つじのとうふすくいを購入する

週刊朝日 2014年10月31日号