取引の数日前、暴力団関係者から拳銃売買の仲介を持ちかけられたA被告は、B刑事に、「近々6丁の道具(拳銃)が動く話がある」と情報提供。これに対しB刑事の反応は、「上と相談した所、今回は行確(行動確認)のみで終わるけど、そのままの流れで行ってください」。

 A被告は過去の「S」の経験から府警は被疑者をその場で逮捕せず尾行などで行動確認し、入手ルートなどを把握してから一網打尽で検挙する「泳がせ捜査」を行うつもりなのだと判断したという。

 そして2月23日、A被告は、事前にB刑事と頻繁に連絡を取り合ったうえで、取引を決行。A被告は銃の専門知識を買われて検品役を務めた。買い主はホテルの外の車で待機していた。

 先ほどの場面で、作業着の男がトイレの個室にリュックサックを置いて出ると、入り口で客の出入りを見張っていたA被告が入れ違いに個室に入り、検品を始めた。ノートにはこうある。

<ズボンをはいたまま便座に座り、手袋をはめて順々に包みを取り出すと、どれもがズシリと重くこれは道具に違いないと確信しました>

<ひとつ開けてみると油紙に包まれた回転式でそれと一緒にビニールチャック袋に入ったマメ(弾丸)も出てきて、ひとつ開けては足元に置いて又次を膝の上に乗せて検品を繰り返しました>

 拳銃は回転式が4丁、自動式が2丁で、イタリア製、米国製、ブラジル製と種類や口径もさまざま。それぞれに十数~数十発の実弾も付属していた。

(ジャーナリスト・今西憲之、本誌・小泉耕平)

週刊朝日  2014年11月14日号より抜粋

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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