「女性の活躍」を目指したものの、失脚が相次ぐ安倍政権の女性官僚たち。そんな彼女らに作家の室井佑月氏は「女性でなく、彼女ら自身がおかしいのだ」と苦言を呈する。

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 いったい安倍政権はなにがしたかったのか。安倍首相は「すべての女性が輝く社会づくり」を最重要課題に挙げ、9月の内閣改造で5人も女性を閣僚にした。

 悪辣な政治資金規正法違反の疑いがある小渕優子経産相(18日現在)。公選法違反の疑いで刑事告発された松島みどり法相(同)。ヘイトスピーチ団体とのつき合いで叩かれている山谷えり子国家公安委員長。ネオナチ団体とのつき合いが問題になっている高市早苗総務相。

 ここまでくると、わざとかよ、とさえ思えてくる。この人事を行った人たちの心根は、セクハラ野次の都議みたいなものであって、

「女になにが出来るっていうんだ。ま、飾りだよ、飾り」

 そうやって選んだのか、

「女は馬鹿だから。ほーら、ね」

 と喜びたかったのか。

 いや、後者はないか。一応、5人の女性閣僚は第2次安倍改造内閣の目玉だったんだし。

 こんなんじゃ、逆に女が生きづらくなるだろうが。

 だいたい、「すべての女性が輝く社会づくり」において、なぜ世の中の底辺で苦しんでいる女たちにスポットを当てないのだ。弱者を救済することが政治の役目なんじゃないのか。ほんと安倍さんて、コピーライターみたいな仕事しかしないよな。

 20日付(18日発行)の日刊ゲンダイに数字が載っていたから取り上げる。

「日本の女性の貧困率は12.7%と先進国で圧倒的に高い。働く女性の非正規雇用率は56%に達し、単身女性の3分の1が年収114万円未満というデータもある」

 2011年に国立社会保障・人口問題研究所が出したデータでは、「20歳から64歳の単身女性の3人に1人が貧困」「19歳以下の子どもがいる母子家庭では貧困率は57%」。

 こうして数字にしてみると、改めてすごいことになっているとわかる。

 そういえば本日(18日)、高市総務相、山谷国家公安委員長、有村治子女性活躍担当相が靖国神社を参拝し、それぞれ「総務大臣」「国務大臣」名で記帳してきて、そのくせ「私的参拝だから、他国にどうとかいわれる話ではない」などといっているとか。

 おなじ女として、まったく理解できない。

 あたしだって、お国のために死んでいった人たちには謹んで手を合わせる。が、子を産む性の女だもの、そんな単純な思いで済まない。女だって命がけで子どもを産むのだ。国のために死んだのは偉い、そんな単純に思えるわけないだろう。

 結局、私的参拝だなんだと吠えているが、記帳に堂々と職名を書く辺り、それが彼女らのモチベーションなんだよね。古い考えのオヤジと一緒だ。

 まるで女の良さを生かしていない。社会における力の強弱を男ほど気にしない、自分とは違った階層の人間にもすぐさま共感できる、それが女の強みなのに。

 彼女たちは異常。「だから女は」っていわないで。

週刊朝日  2014年11月7日号より抜粋

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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