プロゴルファーの丸山茂樹氏は、日本オープンゴルフ選手権で優勝した池田勇太選手の発言にこう苦言を呈する。

*  *  *

 日本オープンゴルフ選手権(10月16~19日、千葉CC梅郷コース)は大盛況だったみたいですね!

 もちろん、昨年のマスターズ・トーナメントを含め、米PGAツアー通算11勝で世界ランキング2位のアダム・スコット(34)が初出場したのが大きかったのでしょう。

 大勢のギャラリーが彼の組にくっついて回ったようですが、通算4オーバーの38位に終わりました。もともと、いい結果を出すのは厳しいと思ってました。なにしろ彼にとっていまはシーズンオフです。それに日本の伝統的な林間コースである梅郷の高麗芝に適応するには、ハーフだけの練習ラウンドでは準備不足。辛口で言わせてもらえば、試合に臨む姿勢がいい加減だなあと思いました。

 一方で優勝した池田勇太(28)はアッパレ! タフなセッティングの中で勝ちきったのは、立派だと思いますよ。最終日の16番パー3でダブルボギーをたたいたりしなかったら、もっと楽に勝てましたけどね。まあでも、勝てば官軍ですから。何があってもね。

 勇太はこれが今季ツアー初勝利。2009、10年に続けて4勝ずつしたころの勢いはないですけど、11年以降も1勝ずつ重ねてきてるのは素晴らしいですよ。いまは試合数が少なくて、調整も難しくなってますから。今シーズンは開幕直後からケガ続きでしたしね。選手会長の責任もある中で、こうしてちゃんと頭角を現すことができてるのは、本人としても充実感があるんじゃないでしょうか。この優勝で来シーズンの全英オープンの出場権も手に入りました。

 しかしですね、ちょっと言いたいことがあるんです。勇太は勝ったあと、「米ツアーでやるのは夢」と語ったそうですね。それはいい。問題は時期です。

「こっちで賞金王をとって、鳴り物入りで参戦しないと面白くない」

 なんて言ってるわけです。これにはカツ! 思うんですけど、「~してから」って言うなら、行かない方がいいと思うんです。

 結局ね、不安があるからそういうことを言うわけですよ。「自分にもやれる」と確信してから行きたい、と。そんなの、もし賞金王とれなかったら、ずっと行けなくなっちゃうじゃないですか。勇太も12月で29歳になります。ほんとだったら、いますぐ行かないとマズいですよ。

 ほんとに心から米ツアーに本格参戦したいなら、すぐ行かないと。挑戦したい場所があるなら、その気持ちがホンモノなら、「~してから」なんて関係なくなるんです。

 石川遼も松山英樹も国内ツアーの賞金王になったあとで米ツアーを主戦場にしましたけど、彼らの挑戦に「~してから」という発想はなかった。どうしても勇太が「~してから」と言うなら、ちょっとでもどこかに不安があるんだったら、日本で毎年きっちりと、いい仕事をした方がいい。僕はそれが正しい選択じゃないかと思います。

 やっぱりね、アメリカって安易な気持ちで行かない方がいいと思うんです。ほんとに厳しい世界だから、必ず打ちのめされるときが来る。そのとき、ホンモノの覚悟を持ってる人しか、自分の道を切り開いていけないんです。

週刊朝日  2014年11月7日号

著者プロフィールを見る
丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

丸山茂樹の記事一覧はこちら