作家の黒川博行さん(右)と画家の雅子さん夫妻(撮影/楠本涼)
作家の黒川博行さん(右)と画家の雅子さん夫妻(撮影/楠本涼)

 候補6度目にして今夏、直木賞に輝いた黒川博行さん。受賞作『破門』(KADOKAWA)の装画を手掛けたのは、“よめはん”で日本画家の雅子さんだ。初期から新作に至るまで夫の作品のカバーを描く。結婚して42年、「ずーっと戦っている」という2人の歴史とは?

夫「出会ったのは、芸大(京都市立芸術大学)時代、その4年間が人生の華でしたわ」

妻「私は日本画で、この人は彫刻。同期生でした」

夫「デザイン科を2回受け、2回とも落ちた。当時、倍率が30倍ぐらい。それで彫刻に鞍替えしました。でも入ってみたら彫刻って面白い。素材によって5、6種の彫刻があったんです。俺は樹脂、非鉄金属を使った抽象彫刻を作ってました」

妻「私は日本画。文化勲章をとった秋野不矩(ふく)教授(2001年死去)に教わりました。絵が好きで今に至るまでずっと描いています」

 2人が出会った1969年は学生運動が激しい盛り。その余波で1~2カ月の間、授業がほとんどなかったこともあったという。

夫「もう遊んでばっかりでした。出会ったんは1回生の終わりぐらいちゃうかな? そのころ、大学の近くに雀荘(じゃんそう)ができたんですよ」

妻「忘れもしない東(トン)という名前の雀荘」

夫「その雀荘に出入りするようになり、よめはんと出会ったんです」

妻「あのころ、昼過ぎに雀荘に行って、閉店の午前0時ぐらいまで麻雀をし、それから下宿に帰って、また朝まで麻雀。昼まで寝て大学に行くと、メンバーが揃うのを待ってる人らがいて、私を見ると、『4人目が来た』と(笑)。また雀荘に行くという繰り返し。麻雀はね、指紋がなくなるぐらいやっています」

夫「よめはんとは麻雀したり、旅行に行ったり、飲みにも行ったりと、大学の2年ぐらいからずーっと一緒。最初はグループで行動し、4回生のころには一緒に住んでいました」

妻「学生時代以来、夫とはずーっと戦い続けてきた。麻雀、将棋、花札、トランプ、チンチロリンとか。いつも真剣勝負。麻雀、将棋は6割、夫のほうが勝ってます」

週刊朝日  2014年11月7日号より抜粋