成毛眞さん(右)と林真理子さん(撮影/写真部・大嶋千尋)
成毛眞さん(右)と林真理子さん(撮影/写真部・大嶋千尋)

 マイクロソフト日本法人のトップとして、日本のIT業界の草創期を支えた成毛眞さんは、大の読書家。現在は書評サイト「HONZ」も主宰する。作家・林真理子さんと対談し、本の売り方の一つのアイデアを示した。

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林:出版も斜陽産業と言われてますけど、ある日気がついたらよくなってたなんてことないですかね。

成毛:あり得るんじゃないですか。売りようがあると思うんです。ネットに時間を取られて本や雑誌を読む時間がなくなってますが、そのうちに飽きますよね。「やっぱり紙がおもしろい」という時期が来るんじゃないですかね。

林:成毛さんは年間1500冊ぐらい本を読まれるって、どこかに書いてありましたよ。

成毛:そんなに読みませんよ。僕は「読書家」じゃなくて「買書家」と言ってるんです。本を読まずに買っているという。サイエンス系のノンフィクションが専門ですから、全部買ったところで新刊は千点もありませんし。献本でいただく本を入れると千何百冊になると思いますけど。

林:成毛さんがやっている書評サイトの「HONZ」はすごい人気ですものね。

成毛:月に100万PV(ページビュー)ぐらいありますね。「HONZ」のメンバーには、「書評じゃなくて書店のポップの長いやつを書け」と言ってるんです。それから、「本のあらすじを書け。とくにノンフィクションは内容をかなり書きこんでいい」と。

林:どうしてですか。

成毛:いま、みんなケータイやパソコンでものすごい量の文字を読んでるでしょう。だから比喩的に言うのではなく、単刀直入に言ってあげたほうがいいんです。

林:なるほど。

成毛:たとえば推理小説なんかは、最初の8割をネットで無料公開して、ラストの2割を800円にするとか、そういう売り方があってもいいと思うんです。何でもかんでも1冊売り切りにする必要がない時代になってくるかもしれませんね。

週刊朝日  2014年11月7日号より抜粋