堀江貴文氏は、今注目を集めるバイオベンチャーのユーグレナとライブドアとの関係をこう語る。

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■武田薬品工業がユーグレナと包括提携

 ユーグレナに最初に投資したのは、実は私が経営していたライブドアのファイナンス部門が運用するバイオファンドだった。

 現社長の出雲氏とユーグレナの培養を研究していた鈴木氏と知り合い、ユーグレナのプレゼンテーションを受けて即投資を決めた。ファンドから1千万円出資して4千万円経営陣に貸し付けし、事業化に向けて動くことになったのである。

 ユーグレナは動物と植物の両方の性質を持つ。すなわち葉緑体を持って光合成で栄養分を作ることができる植物のような特性を持つ一方、細胞壁を持たず自立して動きまわることができる動物的な特性も持っている。そのため人間は消化することのできない細胞壁の構成成分であるセルロースを分解する必要がなく、さらに良質の動物性タンパク質をそのまま吸収できるために栄養価が高いのである。人間の必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのだ。

 武田薬品工業が注目したパラミロンのような他の生物にはあまり作れないような薬効成分を含んでいることもアドバンテージとなっている。そのため、大量培養が難しかった。なぜなら、栄養価が高い微生物は他の大型の微生物の餌食になってしまうからだ。

 少しでもコンタミネーション(異物が混じること)があるとユーグレナが死滅してしまうこともあった。ユーグレナ社は独自の技術でその弱点を克服して、石垣島の野外プラントでの大量培養に世界で初めて成功した。そして、まずは健康サプリメントの拡販からマネタイズしようとしたのである。

 しかし、ライブドア事件が起き、風評被害も加わって不遇の時代が長く続いた。しかし、ユーグレナ自体が悪いわけではない。健康食品や薬剤などにも使える可能性が高いということで、まずはテレビショッピングから火が付き、今やヨーグルトやクッキー、果てはラーメンにまで使われるようになった。

 良質のタンパク質が含まれるということは途上国などで栄養失調になっている人々の手軽な栄養源としても使用することができる。それどころか空気中の二酸化炭素を固定することができるので、地球温暖化対策にもなる。だからこそ航空機用の燃料の原料としても注目されているのである。

 ここにきて注目が集まっているのは、消費者向けの食材などに広く使われるようになって市場規模が大きくなってきて、認知度が上がってきたのも大きいはずだ。すでに広く知られている微生物由来の原料としてはクロレラが挙げられるが、ユーグレナのインパクトはそれ以上であると思われる。今回の提携でさらなる飛躍が考えられると思うので期待したいと思う。

週刊朝日  2014年11月7日号より抜粋