作家の室井佑月氏は、日本の若者はもっと意見をいうべきだとこういう。

*  *  *
 
 ものすごく期待していたけれど、憲法9条はノーベル平和賞を受賞できなかった。今年の受賞は、女子教育の権利を訴えるパキスタンのマララ・ユスフザイさん、そしてインドの児童労働問題に取り組んでいるカイラシュ・サティヤルティさん。

 マララさんはまだ17歳。受賞決定後のメッセージも格好良かった。

「この賞は、ただ部屋に飾ったりするためのメダルではない。終わりではなく、始まりに過ぎない」

 彼女はイスラム過激派組織の男に頭部を銃撃された後も活動をつづけたんだとか。勇気あるなぁ。

 今のこの国のおかしさを、海外報道記者が暴いてくれるんじゃないか。そう考えていた自分が恥ずかしくなったよ。

 そして、若者たち。我々大人が考えるこれから先より、若い人たちのこれから先のほうが少しだけ長い。少しだけといっても、生きていくことは結構大変なことであるから、若者はどんな未来を望むのか、どしどし意見をいっていいはずだ。

 ぜんぜんニュースになっていないが、10日、特定秘密保護法に反対する学生有志の会「SASPL」の呼びかけで、緊急の首相官邸前デモがあった。学生や若者、550人余(主催者発表)が集まったらしい。

 あたしはこのことをネットで知って、どのようにニュースで取り上げられるのかに注目していた。

 この原稿を書いているのは12日の早朝だけど、今のところ、しんぶん赤旗でしか取り上げられていない。

 どうして? テレビではちょくちょく若者の生の声を取り上げる番組作りをするのにね。仕込みじゃなく、500人も若者が集まっているじゃないのさ。

 マララさんの勇気にも感動したが、あたしはこのデモに集まった若者たちにも感動したぞ。

 デモに集まった子たちは、写真を撮られているかもしれないわな。フェイスブックやツイッターで仲間を集めているみたいで、身元がバレる恐れもあるわな。

 それが、今の世でどんなに勇気あることか。

 就職試験のとき、身元調査をされ、不利になることがないともいえない。利潤追求至上主義で、社会貢献なぞ考えない大手企業は、とくにそういうことをしそう。

 けれど、ここに集まった若者たちは、自分のことだけじゃなく、自分をふくめた大勢のこれからを憂えて立ち上がったわけでしょう。なかなかできることじゃないと思う。格差が広がる昨今、その行為は銃弾に動じなかったマララさんに匹敵するのではないか。

 そうそう、9月2日付の東京新聞に載っていた、文部科学省が国立大の文系学部を、廃止や転換せよとの改革案を大学に通達した、という記事。

 行数がないからきちんと書けないけれど、結局、今の大人は、今の自分に都合の良い若者しかいらないってことだ。

 若者よ、叫べ。

週刊朝日  2014年10月31日号

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら