読む人をハッとさせる 日本人のこころに響く色色彩雫は「紺碧」「深海」「朝顔」「月夜」など、様々な色調の青が用意されているほか、筆者は「霧雨」や「稲穂」などの淡い色味は太字の万年筆にして、重なりから生まれる濃淡を楽しんでいる。値段が手頃なカジュアル万年筆に別売りのコンバーター(インク吸入器)をセットすれば、簡単に色を変えられる(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
読む人をハッとさせる 日本人のこころに響く色
色彩雫は「紺碧」「深海」「朝顔」「月夜」など、様々な色調の青が用意されているほか、筆者は「霧雨」や「稲穂」などの淡い色味は太字の万年筆にして、重なりから生まれる濃淡を楽しんでいる。値段が手頃なカジュアル万年筆に別売りのコンバーター(インク吸入器)をセットすれば、簡単に色を変えられる(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
透明軸に入れて見分ける。※万年筆は筆者私物(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
透明軸に入れて見分ける。※万年筆は筆者私物(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
日本の情景が育んだ色(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)
日本の情景が育んだ色(撮影/外山亮一・スタジオ・テンフォー)

 週刊朝日で好評連載中の「美意識ある生活」。生活品評論家の東海左由留(とうかい・さゆる)さんが厳選したひと品を紹介している。東海さんは日本とヨーロッパで「生活をより豊かに」をテーマに様々なアイテムやサービス、ライフスタイルを取材。自腹で購入し、時間をかけて使用感を検証している。

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 今回は、パイロットの万年筆を紹介する。

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■万年筆のインク、青や黒にこだわらずとも

 万年筆のインクの色はブルーブラックが定番。読みやすい色だし、ビジネスやお礼状ではこの色か黒、青が礼儀にかなっているだろう。

 しかし、ちょっと考えてみてほしい。近頃、万年筆でしたためる手紙やカードは、ほとんどが親しい間柄でのやりとりではなかろうか。だったら、形式張った考えはひとまず脇に置いて、もっと遊んでもいいはずだ。「万年筆のインクはこういう色である」という先入観が色を選ぶ楽しさから人を遠ざける。

 私は季節やそのときの気分、送る相手をイメージしてインクを使い分ける。中でもパイロットの色彩雫は和の色の名前がつけられ、日本の情景に触発された微妙な色合いが魅力だ。じめじめした季節は爽やかな「露草」を、渋い男友達には「山栗」を、ワインを贈るときには「山葡萄」などと、色を変えると書く喜びが増す。悪筆なので、美しい色でごまかしたいという思惑もあるのだが。

<今日の逸品>
パイロット 色彩雫 全24色 各1500円(税別)
問い合わせ先:パイロットお客様相談室

※パイロット 色彩雫を購入する

週刊朝日 2014年8月15日号