乳がん治療で失った乳房の代わりに、新しい乳房をつくる。昨年と今年、その可能性が大きく広がる出来事があった。インプラント(シリコーン製の人工物)が、健康保険で使えるようになったのだ。

 乳房再建には、大きくおなかや背中の組織を胸に移植する自家組織による方法と、インプラントを入れる方法とがある。

 パッチワーク状の瘢痕(はんこん・傷痕)を残さないためには、がんとともに乳房を摘出した後に、エキスパンダー(皮膚を伸ばすための袋状の拡張器)を入れ、少しずつ生理食塩水を注入して膨らませ、皮膚や組織を伸ばしていく。数カ月から半年ほどかけて皮膚などが十分伸びたら、自家組織、あるいはインプラントに入れ替える手術をして、再建が完成する。

 これまで健康保険が使えたのは自家組織による再建だけだったが、2013年7月に全体的に丸みを帯びた「おわん形」のインプラントが、今年1月には下に向けて厚みをつけた「しずく形」のインプラントが保険適用となった。

 しずく形は日本人女性の乳房に多いタイプで、より自然な形に仕上げることができる。これを受け、乳房再建を決意する女性も増えているという。

週刊朝日  2014年10月24日号より抜粋