アジア大会で日本人選手らとデッドヒートを制したバーレーンの選手 (c)朝日新聞社 @@写禁
アジア大会で日本人選手らとデッドヒートを制したバーレーンの選手 (c)朝日新聞社 @@写禁

 先日閉幕したアジア大会のマラソンでは日本選手が男女とも優勝を逃し、勝ったのは共に中東のバーレーンの選手だった。

「バーレーンにマラソンが強いイメージはないですよね? 実はどちらも長距離王国のケニアから帰化した選手。少し前から5千メートルとか1万メートルのトラック競技では、ケニアやエチオピアの選手が他国に帰化して国際大会で活躍する傾向がありました。卓球で、中国出身の選手が色々な国の代表としてプレーしているのと似ています。マラソンもアジアで日本選手が勝つのは難しくなってきました」(ベテラン五輪担当記者)

 2日の女子のレースでは、17キロ過ぎから日本の木崎良子(29)とバーレーンのユニスジェプキルイ・キルワ(30)とのマッチレースとなったが、木崎はキルワの37キロ手前のスパートに振り切られ、13秒差の2位。キルワは昨年までケニア国籍。マラソンのベストタイムは一昨年のアムステルダムで2位になった2時間21分41秒と、今回の参加選手中トップの持ちタイム。

 つまり彼女の優勝は当然の結果だった。

 翌3日の男子のレースも最後の最後、トラック勝負を制したのがバーレーンのハサン・マフブーブ(32)で、1秒差の2位に松村康平(27)、4秒差の3位に川内優輝(27)。マフブーブは、かつてアジア大会の5千メートルと1万メートルで優勝していてスピード勝負で強いのは納得だが、実はマラソンは初めて……。レースに出場しなかったが、バーレーンにはもう一人、エチオピアから帰化したシュミ・デチャサという選手が出場予定だったが、そのベストは2時間6分43秒……。もし、出場していたら持ちタイムはトップだった。

「日本陸連は今回のアジア大会のマラソンで優勝した選手に来年の北京での世界選手権の内定を出す、と決めていました。木崎も松村ももらい損ねたわけです。オイルマネーの力に屈してね」(スポーツ紙デスク)

 アスリートの帰化、国籍の変更については議論がある。ロンドン五輪前、お笑いタレントのひろしがカンボジア国籍を取得し、一度は同国のマラソン代表になったものの、国際陸連からクレームが出て取り消しになった。猫の場合、タイムも悪く、カンボジア国内にタイムで上回る選手がいたため、別の意味でも議論になった。その猫が今回のアジア大会のマラソンにカンボジア代表で出場し、完走者の中では最下位の14位だったのも象徴的だった。

「五輪に出るためだけに他国に帰化する猫のような選手がいる日本と、トップレベルが2時間2分台に突入した母国で代表になれなくても、稼ぐために他国の国籍を得て同国代表として競技を続けるアフリカの選手と、どちらが勝つかは明らかでしょ」(前出記者)

(岸本貞司)

週刊朝日  2014年10月24日号