TOTO 田口みやま氏(46)/販売統括本部メディア推進部部長たぐち・みやま/1968年生まれ。91年、東京女子大学卒業。同年、東陶機器(現TOTO)入社。マーケティング本部、きらめき推進室、コミュニケーション本部などを経て、2012年から現職(撮影/写真部・大嶋千尋)
<br />
TOTO 田口みやま氏(46)/販売統括本部メディア推進部部長
たぐち・みやま/1968年生まれ。91年、東京女子大学卒業。同年、東陶機器(現TOTO)入社。マーケティング本部、きらめき推進室、コミュニケーション本部などを経て、2012年から現職(撮影/写真部・大嶋千尋)
週刊朝日・長友佐波子編集長(撮影/写真部・大嶋千尋)
<br />
週刊朝日・長友佐波子編集長(撮影/写真部・大嶋千尋)
田口さん(右)と長友編集長(撮影/写真部・大嶋千尋)
<br />
田口さん(右)と長友編集長(撮影/写真部・大嶋千尋)

『週刊朝日』の長友佐波子編集長が企業で輝く女性たちにインタビューする「フロントランナー女子会」。今回はTOTOの田口みやま販売統括本部メディア推進部部長です。

*  *  *

田口:当社は以前から育休制度や時短勤務制度などは要望に合わせて改定を続けていますし、それなりに女性活用に力を入れていたはずなんです。でも社内で意識調査をすると、男性と比べて女性は、仕事のやりがいを感じる数値が低い傾向にあった。そこでこれからの女性の働き方を考えるプロジェクトが立ち上がりまして。私は当時いた部署のグループリーダーをやってたので、人事に呼ばれて参加することになった形です。

長友:じゃあ、管理職の女性たちで集まる会ですか?

田口:最初は。でもそれだと意見が偏るので、社内で公募していろんな立場の方に参加してもらって現状把握を行いました。その後当時の木瀬(照雄)社長直轄の専任組織となり、具体的な検討を進めました。すると当社が扱う商品は女性がよく使うのに、商品開発をするのは男性中心で、いまひとつ生活者の視点が取り込めてないことに気づいたんです。単に管理職を増やすとかいう女性活用ではなく、もっと女性の視点とか経験を生かすしくみを作りたいと。それを社長に報告したら「じゃ、あなたがやって」と言われて(笑)。

長友:それで室長になったんですね。具体的にはどうやって動きました?

田口:全部署の部門長に、どんな小さな規模でもいいので、生活者としての女性の視点を取り込めるための業務を設けてください、ゆくゆくは女性に限らなくてもいいのでトライアルで女性を使ってくださいと説明して回りました。

長友:全部署! 大変ですね。なぜ女だけ、みたいな反発は出なかったですか?

田口:組織が立ち上がったときは多少ありました。それよりも実際に女性の意見を採り入れていく段階で、技術者の男性と、感覚で会話をする女性の“言語”の違いで、衝突や噛み合わないことは多々ありましたね。たとえばウォシュレットの本体って、以前は便器ボウルのカーブに沿ってなくて一直線だったのですが、掃除がしにくいからカーブに沿うようにえぐってほしいという意見が出たんです。でも開発者からしたら精密機器が詰まっている部分なので削るのはとんでもない。

長友:素人が何を言ってるんだ、的な。

田口:ええ。でもお客様にとって良い商品にしたいという思いは同じなので、女性も感情的に伝えるだけじゃなくて、要望の背景や使用シーンを伝えるなど開発者がわかるように説明を工夫したり、開発者側も仕様に落とし込めるよう要望を深掘りして聞いてくれるようになったりしてお互いへの理解が深まり、いい関係性ができてきました。ウォシュレットもそれが標準の形になりましたし、いろんな場所でそういうことが起こって、かなり仕事の仕方が変わったと思います。

週刊朝日 2014年10月24日号より抜粋