段ボール箱を再利用して作った小箱に着物の布地を貼って、小物入れにリメーク。「ハンカチ入れなどにも使っています」と話す宮城美智子さん(撮影/倉田貴志)
段ボール箱を再利用して作った小箱に着物の布地を貼って、小物入れにリメーク。「ハンカチ入れなどにも使っています」と話す宮城美智子さん(撮影/倉田貴志)
ごちゃごちゃしがちなストッキング類は紙コップに入れて収納。全体量が一目瞭然だ(撮影/倉田貴志)
ごちゃごちゃしがちなストッキング類は紙コップに入れて収納。全体量が一目瞭然だ(撮影/倉田貴志)
アルバムはこれだけに整理した。「このほうがかえって気軽に見返すようになりますよ」(宮城さん) (撮影/倉田貴志)
アルバムはこれだけに整理した。「このほうがかえって気軽に見返すようになりますよ」(宮城さん) (撮影/倉田貴志)
宮城さんは母のお気に入りだった絵羽織をリメークして額装。「芸術品のようでしょう?」(撮影/倉田貴志)
宮城さんは母のお気に入りだった絵羽織をリメークして額装。「芸術品のようでしょう?」(撮影/倉田貴志)

 思い出の物が捨てにくいのは当然だ。「思い出にまつわる品は、やはり一番かたづけるのが大変なんですよね」。そう言うのは収納コーディネーターの宮城美智子さん(67)だ。引っ越し会社社員時代を含め、1万件ものかたづけ現場に携わってきた実感という。

 宮城さんのアルバムに貼られた写真は厳選されていた。例えば旅行写真は1カ所あたり、わずか数枚しかない。

「同じようなポーズを省き、何を撮ったか判然としない構図も処分。とにかく私がきれいに撮れているかが判断基準です(笑)」(宮城さん)

 これなら記者にもできるかと一瞬思いかけたが、わが家のアルバムは台紙の枚数を増やして貼れるロングセラー「フエルアルバム」が20冊以上。いちいちはがす手間を考えるだけで気が遠くなった。「そんなときは、カメラ店のデータ化サービスを利用する手がありますよ」と宮城さん。

 アルバムをデータにしてDVDに保存するサービスのことだ。価格はある業者で60ページで6千円前後。これならパソコンやテレビで再生でき、収納に場所も取らず、家族みんなで気軽に見られる。ただ1冊だいたい1キログラムと重く、店頭に運ぶまで大変そうだが、団塊世代より若ければ何とかなるだろう。

 次に宮城さんが処分の要と示したのが、着物だ。一番処分に気を使った品といい、タンス一棹半に数十点が収まっていた。

「いわば母の生きてきた証しですもの。おろそかには扱えませんでした」

 だが、収納スペースは限られる。最終的にツテを頼って紹介された着付け教室の講師や生徒に大部分を引き取ってもらった。

「“タンスの肥やし”になるより、着物好きな人に活用していただいたほうが母も喜ぶはずと思いました」

 宮城さんが手元に残したのはわずか3枚。手違いで母の棺に入れられなかった紫の訪問着と留袖、母が特別気に入っていた絵羽織だ。

 訪問着は「自分があちらへ旅立つときに持っていく」との理由で残した。絵羽織は和装リメークの業者に頼み、ほどいて絵柄の部分を切って額装し飾った。

「何気ない日々の中でふと額に目をやる。まるで母と目が合って対話しているような気になります」

 宮城さんが若いころに誂(あつら)えた羽織などは段ボールで作った箱に貼られ、いくつもの小物入れに変身。うち一つは母からもらった手紙を入れた宝箱に。記者が「しゃれていますね」と感心して眺めていた掛け軸は、「名古屋帯で作ったのよ」と宮城さんが笑う。

 女性の場合、着物は親の遺品のほか、自分の持ち物でも処分に困る筆頭格だ。「いつか着るかも」と考えがちだが、一着ずつ和紙に包まれ、小物も多く、かさばる。和装の習慣がない人には結局、“死蔵品”になる運命だ。

 ほかにも扱いに悩むものは、少なくない。洋服、バッグ、贈答品、賞状やトロフィーにぬいぐるみ……。目にした途端、輝かしい過去が走馬灯のように駆け巡る、まさに思い出の品々。

「その中で、どれが一番お好きですか?」

 宮城さんは、老人ホームなどへ転居する高齢者向けセミナーなどで、いつもそう問いかけるという。

「どれが大切か」と聞かれて選べなくても、「好き嫌い」を基準にすると、すんなり決められることが多いそうだ。

「すると、それ以外のものを処分する抵抗感が減ります」(宮城さん)

週刊朝日  2014年10月17日号より抜粋