ガソリン価格もじわじわ上がり始めている (c)朝日新聞社 @@写禁
ガソリン価格もじわじわ上がり始めている (c)朝日新聞社 @@写禁

 急激な円安が止まらない。10月1日の東京外国為替市場で、ドル円相場は6年1カ月ぶりに一時1ドル=110円台まで円安が進んだ。米国景気の先行きへの期待感から、円を売ってドルを買う動きが強まった。

 第2次安倍政権がスタートした2012年12月26日は1ドル=85円台。2年も経たないうちに約25円も下がったのだ。

 急激な円安は日本企業の海外での収益を押し上げると期待されている。輸出が伸びて大企業が儲かり、その下請け企業も恩恵を受ける「トリクルダウン」効果が生まれるというのだ。

 さらに、企業が儲かれば、サラリーマンの給料もアップする。購買意欲が高まればモノが売れ、物価が上がり、企業の収益が上がる――。

 これが、「アベノミクス」で描いた夢のシナリオだ。だが、実際に所得が増えているのは大手企業に勤める一部の人たちだけ。国民のほとんどは給料が上がらないのに、4月には消費税が5%から8%になった。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。

「円安株高で安倍政権は安泰でしょうが、家計は火の車です。消費税増税による物価の上昇で苦しんでいるのに、さらに円安が進むと、輸入価格が上がり、燃料費や食料品、すべてのモノの値段が上がってきます」

 円安は国民の生活を悪化させるというのだ。では、今後どの程度まで円安は進むのか。

 某準大手証券のストラテジストは、「円安はしばらく続きます」と予想する。

「米国は量的金融緩和政策(QE)を10月にも終えて、利上げが視野に入ってきました。一方で日本は景気が上向かないため、追加の金融緩和の思惑がくすぶっています。加えて毎月1兆円近い貿易赤字を垂れ流しているので、金利の高いドルを買って円を売る動きは予想以上に早くなるとみています」

 来年には1ドル=120円まで下がる可能性もあるというのだ。

 奇しくも1ドル=110円台まで進んだ10月1日は、モノの値上げが相次いだ。

「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、メニューの大半を5~10%値上げ。看板メニューの「餃子」は20円増の240円(東日本エリア、税別)になった。スターバックスコーヒージャパンも、ラテなど12商品を10円程度値上げ。キーコーヒーも量り売りのコーヒー豆の価格を平均6%アップした。

週刊朝日  2014年10月17日号より抜粋