端正な美人なのに、どこかほんわかとした雰囲気がある比嘉愛未さん。作家の林真理子さんとの対談で、注目されるきっかけとなったNHK朝の連続テレビ小説のオーディションを振り返った。

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林:スカウトされたんですよね?

比嘉:地元の塾にバイトで来ていた先生が、たまたまモデル事務所の社長と知り合いで、「やってみない?」と声をかけられたんです。それで高校に行きながらモデルのお仕事をしているうちに、表現することが楽しくなってきたんですね。高校卒業間際に映画のお話があって、地元感のある子がいいということで、選んでもらったんです。お芝居未経験でも、セリフの量も少ないから大丈夫だと。

林:ええ。

比嘉:でも、本番になったら真っ白になってしまって。3行ぐらいのセリフが言えなくて、何回もNGを出してしまったんです。そのときに生まれて初めて大きな挫折感を味わいました。このまま沖縄にいてもこの悔しさが残る、もう一回お芝居に挑戦してみようと思って、東京に出ることにしたんです。

林:沖縄の女の子って、東京に出てくる人も多いんですか。

比嘉:いえ、私の周りにはほとんどいなくて、みんな地元で就職してます。しかも卒業する3カ月前に決めたのでみんなに反対されました。だから「援助なしでやります!」と言って、思い切って出てきちゃったんです。貯金も少ししかなかったんですけど。

林:私が比嘉さんを初めて見たのはNHKの朝ドラ「どんど晴れ」でしたが、なんてかわいくて清楚な女の子だろうと思いましたよ。

比嘉:両親からは、「1年たって物にならなければ帰ってこい」と言われてたんですが、ちょうど期限ギリギリがそのオーディションだったんですよ。ほんとにギリギリセーフでした。

林:まあ、そんなことってあるんですね。いきなり朝ドラのヒロインなんて。

比嘉 自分でも信じられませんでした。たぶんいい運を持っていて、毎回その運が大きいんですよね。今回も舞台をやりたいと思い続けていたら、いきなり青山劇場、帝国劇場と続いて。いつも予想だにしない大きなチャンスが来て、自分がついていけないくらいなんです。

林:朝ドラのオーディションは、何人ぐらいの中から選ばれたんですか? プロの方たちもいたんでしょう?

比嘉:いました。全部で2150人ぐらいいたんですけど、4次審査までありました。

林:ヒロインに決まったと聞いて、ご両親、喜ばれたでしょう。

比嘉:びっくりしてましたね。「まさか!」って。そのときのプロデューサーさんに、あとで「なんであのとき私を選んでくださったんですか?」って聞いてみたんです。そうしたら、「沖縄の田舎娘が、いかにも楽しそうに天真爛漫な笑顔で入ってきて、いつも笑顔でみんなを引っ張っていく座敷わらしみたいなキャラクターの役にぴったりリンクしたから」とおっしゃってました。「受かりたい!」というより、「楽しい!」って感じだったのがよかったみたいです。

林:なるほど。いかにも「絶対受かるぞ!」って感じじゃなくて。

比嘉:はい。私、オーディションを受けられるだけで幸せだったんですよ。余計な邪念がなかったのがよかったんだと思います。そのオーディションのときのビデオがあって、あとで見たら顔もパンパンだし、沖縄弁丸出しで、すごくなまってるんですよ(笑)。よく選んでくださったなと思いますね。

週刊朝日  2014年10月17日号より抜粋