iPS技術で躍進する“認知症新薬”最新事情 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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iPS技術で躍進する“認知症新薬”最新事情

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認知症の症状改善を目的とした学習療法の様子 (c)朝日新聞社 

認知症の症状改善を目的とした学習療法の様子 (c)朝日新聞社 

 発症のメカニズムがいまだに明らかになっていないこともあり、開発がうまく進まない認知症の根本治療薬。この難問に答えが出れば、新薬開発は大きく前進する。近年、それを可能にすると期待される技術が登場した。日本発の「iPS細胞」だ。

 iPS細胞と聞くと、再生医療のイメージが強い。最近では、眼の難病患者に対し、患者の皮膚から作ったiPS細胞を網膜の細胞に変化させ移植するという、世界初の手術が実施され話題になった。だがiPS細胞の可能性は再生医療だけにとどまらない。病気のメカニズムを解明し、効果がある薬を開発する研究が、難病を中心に盛んに進められているのだ。

 京都大学iPS細胞研究所で認知症を研究する井上治久教授はこう語る。

「患者さんの神経細胞を使って解析すること、できれば細胞が減ったり死んでしまったりする前にそれを止める薬を探すこと、そして病態の違いに応じた治療法を考えること。この三つが、iPS細胞によって可能になると考えています」

 井上教授らは、認知症患者の皮膚から作ったiPS細胞を用いて、患者の脳の神経細胞を再現することに成功。2013年には、魚に含まれる脂肪酸の一つであるDHA(ドコサヘキサエン酸)に、神経細胞死を抑制する効果があることを発見した。さらに最新の研究で、患者によって認知症の原因とされるアミロイドβ(ベータ)のたまる場所が一様でないことを細胞レベルで明らかにした。

 実際に薬剤を使った研究も進んでいる。同研究所は今年3月から、製薬会社と共同である新薬を用いた研究を開始したと発表した。それが、富士フイルムとグループ会社の富山化学工業が開発する「T―817MA」という薬(錠剤)だ。

 この薬には脳の神経細胞を強力に保護する働きがあり、ラットによる実験でも、神経細胞死を防ぐ効果が確認されている。進行を緩やかにさせる従来の薬とは異なり、認知機能が悪化するという認知症の進行そのものを抑制する根本的な作用が期待できる。そのため、現在開発が進む新薬のなかでも「画期的な治療薬になるかもしれない」(ある認知症専門医)と大きな期待が寄せられているのだ。

 富山化学工業の泉喜宣総務担当部長は言う。

「この薬は、08年からアメリカで実施された治験(人を対象にして治験薬の安全性や有効性を確かめる試験)で、ある程度病気が進行した中等度の方に、より有効である可能性が認められました。現在、日本と米国で臨床試験が始まっており、16年3月までおこなわれる予定です」

 富士フイルムは、こうした治験と並行してiPS細胞による創薬研究を進めることで、将来的にはより薬が効きやすい患者を見つけたい考えだ。同社によると、現在、患者由来のiPS細胞から再現した神経細胞で新薬の効果を確かめたり、薬が効くメカニズムを明らかにしたりする研究を進めている。今後は、どういうタイプの認知症患者にこの薬が有効なのかという指標を見つけ出すことが目標だという。T―817MAは、7年後の21年の発売を目指している。

週刊朝日  2014年10月17日号より抜粋


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